する も参照。

日本語

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名詞

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ずるズルとも表記)

  1. ずるいこと不正。または、そのような
    • 1926年、牧野信一「毒気」[1]
      私は、何時でも到底敵はなかつた。敗けさうになると私は、不法なズルを敢てした。
    • 2007年、阿部知子、第166回国会衆議院[2]
      とりあえず、平成十年から十五年のお約束は人件費以外のものでございますから、それが例えば繁忙期であれ何であれ、その間の人件費まで保険料でかぶっていくというふうな構造をこのたびの改正でさらに滑り込ませる、そういう邪悪な改正と申しましょうか、これ、ずるですよ。

派生語

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動詞:ラ行五段

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ずる

  1. (他動詞) ひきずるずらす
    • 1912年、泉鏡花「霰ふる」[3]
      「寂しいって、別に何でもないじゃないの。」と云ったものの、両方で、机をずって、ごそごそと火鉢に噛着いて、ひったりと寄合わす。
    • 1940年、金史良「土城廊」[4]
      いつの間にかその一角では先達の夫婦が激しい掴み合いを始めていた。先達が病体をずり起し街へ稼ぎに行こうと出て来た所へ、元三から貰った米袋を振り振り顔の赤くむれた婦がやって来たのだ。
  2. (自動詞) すべっ動いてしまう。ゆるんたれさがるずれる
    • 1929年、小林多喜二「蟹工船」[5]
      死体の顔の上にかけてある白木綿が除れそうに動いた。ずった。そこだけを見ていると、ゾッとする不気味さを感じた。
    • 1939年、宮本百合子「獄中への手紙」[6]
      地盤がずりかかっているとき、地震のとき、人は自分のつかまっている木の幹に、ここを先途としがみついて行くように。
  3. (自動詞) 基準から少しはずれる。ずれる。
    • 1926年、室生犀星「不思議な魚」[7]
      こういう時は漁師の間にも徳義が行われていて、鰯の群れが動くまで待たなければなりません。東へ動くと李一の方の漁になり、南へずって行くと隣村の利益になるのでした。
    • 1936年、宮本百合子「獄中への手紙」[8]
      けさ十一月二日づけのお手紙をありがとう。書く日がずっていることを知らず、二三日随分待って居りました。

活用

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複合語

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動詞:サ行変格

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ずるする

  1. (自動詞) ずるを行う。ずるいことを行う。
    • 1923年、犬養健「朧夜」[9]
      「先生!」もう一人、今度は神経質らしい生徒が野田を見つけて、同じ窓から呼びかけた。「五人抜に入りませんか。僕あ今ずるされて負けちやつたんですよ」
    • 1946年、海野十三「骸骨館」[10]
      縄をひっぱれば、がらんがらんと鳴るから、ははあ当番の奴はたしかにこの工場の中へ入ったなと、みんなの集まっているところへ知れるわけさ。そうすれば、ずるして途中で引返した奴はすぐ分っちまうからいいじゃないか

活用

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接尾辞

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  1. 青空文庫、2010年5月23日作成、2011年5月3日修正(底本:「牧野信一全集第二巻」筑摩書房、2002(平成14)年3月24日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000183/files/45415_39366.html
  2. 「第166回国会 衆議院 厚生労働委員会 第19号 平成19年5月11日」国会会議録検索システム https://kokkai.ndl.go.jp/txt/116604260X01920070511/132 2025年2月13日参照
  3. 青空文庫、2015年10月17日作成(底本:「文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁」ちくま文庫、筑摩書房、2006(平成18)年10月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/48385_57479.html
  4. 青空文庫、2020年2月21日作成(底本:「光の中に 金史良作品集」講談社文芸文庫、講談社、2005(平成17)年8月10日第2刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000252/files/52358_70440.html
  5. 青空文庫、2004年11月30日作成、2022年1月23日修正(底本:「蟹工船・党生活者」新潮文庫、新潮社、1998(平成10)年1月10日89版)https://www.aozora.gr.jp/cards/000156/files/1465_16805.html
  6. 青空文庫、2004年8月17日作成(底本:「宮本百合子全集 第二十巻」新日本出版社、1986(昭和61)年3月20日第5刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/files/33188_16391.html
  7. 青空文庫、2013年8月11日作成、2013年10月11日修正(底本:「文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子」ちくま文庫、筑摩書房、2008(平成20)年9月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001579/files/53180_51201.html
  8. 青空文庫、2004年7月30日作成、2009年2月27日修正(底本:「宮本百合子全集 第十九巻」新日本出版社、1986(昭和61)年3月20日第5刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/files/33185_15705.html
  9. 青空文庫、2021年6月28日作成(底本:「現代日本文學大系 62 牧野信一 稻垣足穗 十一谷義三郎 犬養健 中河與一 今東光集」筑摩書房、1987(昭和62)年9月15日初版第12刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001543/files/52220_73704.html
  10. 青空文庫、2001年11月12日公開、2011年10月8日修正(底本:「海野十三全集 第12巻 超人間X号」三一書房、1990(平成2)年8月15日第1版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000160/files/2686_23968.html