のす

日本語

動詞：伸す

のす【伸す】

1. (自動詞) 伸（の）びる。伸びて進んでいく。
   • この習癖といふのは、自分勝手に一人で自由に手足を伸すといふ習癖であります。 (岸田國士 『芸術家の協力 ――楽壇新体制に備へて――』
   • 觸（さわ）つても觸つても、巖（いわ）ばかりである。手（て）を伸すと、更に堅（かた）い巖が、掌（てのひら）に觸（ふ）れた。 (折口信夫 『死者の書』)
2. (自動詞) 他人を抑（おさ）えて自（みずか）らの地位が上（あ）がる。
   • 幼少から隠忍（いんにん）した甲斐（かい）あって次第に勢を伸す基礎を得（え）た。 (菊池寛 『桶狭間合戦』)
3. (自動詞) 遠（とお）くまで行（い）く。
4. (他動詞) 伸（の）ばす。伸展させる。
5. (他動詞) (熨すとも) 熱や力（ちから）を加（くわ）えてしわを伸ばす。
6. (他動詞, 俗語) 打（う）ち倒（たお）す。

発音

• (東京式) の​す [nóꜜsù] (頭高型 – [1])
• IPA^(?): [no̞sɨᵝ]

活用

活用と結合例

の-す 動詞活用表（日本語の活用）

サ行五段活用
語幹	未然形	連用形	終止形	連体形	仮定形	命令形
の	さ そ	し	す	す	せ	せ

各活用形の基礎的な結合例

意味	語形	結合
否定	のさない	未然形 + ない
意志・勧誘	のそう	未然形音便 + う
丁寧	のします	連用形 + ます
過去・完了・状態	のした	連用形音便 + た
言い切り	のす	終止形のみ
名詞化	のすこと	連体形 + こと
仮定条件	のせば	仮定形 + ば
命令	のせ	命令形のみ

対義語

• (自動詞) ちぢむ
• (他動詞) ちぢめる、まげる

関連語

• のる

動詞：乗す・載す

のす【乗す・載す】

1. (他動詞) 「のせる」(サ行下一段活用) に同じ。
   • ヒンズー教でシヴァとその妻（つま）ズルガ二神（にしん）虎（とら）と縁あれど、虎崇拝は野民諸族に行（おこな）わるといえり、普通にシヴァ像は虎を印号としその皮（かわ）を腰巻（こしまき）とし、ズルガは右足を獅（しし）の背（せ）に乗す。 (南方熊楠 『十二支考 虎に関する史話と伝説民俗』)

発音

• (東京式) のす​ [nòsúꜜ] (尾高型 – [2])
• IPA^(?): [no̞sɨᵝ]

活用

• 古典日本語に同じ。

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古典日本語

動詞

のす【乗す・載す】 (他動詞)

1. 乗（の）せる。上（うえ）にものを置（お）く。
   • 舟（ふね）に、ことごとしき人形（ひとがた）乗せて、流（なが）すを見（み）給（たま）ふにも (紫式部 『源氏物語 須磨』)

     現代語訳: 舟にたいそうな人形を乗せて、流すのをご覧になるにつけても

2. 記載する。書（か）き記（しる）す。
3. 呼吸を合わす。
4. 罠（わな）にかける。計略に引（ひ）っ掛（か）ける。
   • われらが事は空（そら）吹（ふ）く風（かぜ）のやうに乗せをった所（ところ）が憎（にく）い (江島其磧『傾城禁短気』)

発音

• 三拍動詞三類^(?)
• 連体形

  (平安時代)のする

  (南北朝時代)のする

  (室町時代)のする

  (江戸時代)のする

活用

の-す 動詞活用表（日本語の活用）

サ行下二段活用
語幹	未然形	連用形	終止形	連体形	已然形	命令形
の	せ	せ	す	する	すれ	せよ

接尾辞

• (上代東国方言方言) 「なす」に同じ。