ひだりて【左手】
- 左側の手。
- 日本では、例へば西洋料理の食ひ方はかうと、いつの間にか英国流の作法が標準のやうになり、フオオクは左手で持つものときまつたらしいが、これなども、うつかり仏蘭西式にフオオクを右手に持ちかへると、日本のハイカラな紳士淑女からは、却つて笑はれるかもしれない。(岸田國士 『大正風俗考』)
- 左側、左の方面。
- 巣鴨から来た電車がゆっくり白山を下りて指ケ谷へ出る、その辺で左手の裸の崖を眺めると、くすんだ赤い煉瓦の塀のくずれたところがあったりして、やはり荒廃のうちに一種の美しさが感じられる。(宮本百合子「藤棚」『学友会雑誌』誠之小学校、1939年6月16日執筆)