ドイツ語の活用・格変化についての解説、およびウィクショナリーのドイツ語項目における活用表記についての解説をします。

格と性 編集

ドイツ語の名詞には、が存在し、すべての名詞は必ず男性女性中性のいずれかに属します。また、名詞には単数形(Sg.)と複数形(Pl.)が存在します。

ウィクショナリーでは、語義解説の冒頭に 男性,女性,中性 で性を示し、複数形は語尾変化だけでなく単語全体を示します。

ドイツ語の文において、名詞には4つの格があります。

1格(主格)
文の主語となる格。
2格(属格)
主に名詞の後に続いて所有を表す格。
3格(与格)
主に動詞の間接目的語となる格。
4格(対格)
主に他動詞の直接目的語となる格。

ドイツ語ではこの名詞の性や格により、冠詞や形容詞などが格変化を起こします。

冠詞・冠詞類 編集

ドイツ語の定冠詞・不定冠詞は、格および後に続く名詞の性に従って、次のように活用します。

定冠詞
男性 女性 中性 複数
1格(主格) der die das die
2格(属格) des der des der
3格(与格) dem der dem den
4格(対格) den die das die
不定冠詞
男性 女性 中性 複数
1格(主格) ein eine ein -
2格(属格) eines einer eines -
3格(与格) einem einer einem -
4格(対格) einen eine ein -

注)本来「1つ」であることを示すものであるため、名詞が複数形の場合、不定冠詞は用いられない。

定冠詞類・不定冠詞類はこれと類似の活用をします。

定冠詞類
男性 女性 中性 複数
1格(主格) -er -e -es -e
2格(属格) -es -er -es -er
3格(与格) -em -er -em -en
4格(対格) -en -e -es -e

この格変化の仕方をするのは指示代名詞、不定代名詞、疑問代名詞で、dieser, jener, aller, jeder, mancher, solcher, welcherの7語です。

不定冠詞類
男性 女性 中性 複数
1格(主格) - -e - -e
2格(属格) -es -er -es -er
3格(与格) -em -er -em -en
4格(対格) -en -e - -e

この格変化の仕方をするのは所有代名詞と否定冠詞keinです。

名詞 編集

名詞は、男性(m.)・女性(f.)・中性(n.)のいずれかの性に属します。また、それぞれ単数形と複数形があります。

一般に名詞はほとんど活用しませんが、単数の男性・中性名詞の2格には、それぞれ語尾"-s"または"-es"が付きます。また、複数形名詞の3格には、語尾"-n"が付きます。ただし、複数形のうち語尾が"-s"で終わるものと"-n"で終わるものには、この語尾は付きません。

男性 女性 中性 複数
1格(主格) der Vater die Mutter das Kind die Kinder
2格(属格) des Vaters der Mutter des Kind(e)s der Kinder
3格(与格) dem Vater der Mutter dem Kind den Kindern
4格(対格) den Vater die Mutter das Kind die Kinder

ウィクショナリーでは、語義解説の冒頭で、単数2格(属格)の語尾変化だけでなく、単語全体を示します。

男性名詞の中には男性弱変化名詞とよばれる名詞があり、これは単数1格以外の格において、すべて語尾に"-en"または"-n"が付きます。

単数 複数
1格(主格) der Student die Studenten
2格(属格) des Studenten der Studenten
3格(与格) dem Studenten den Studenten
4格(対格) den Studenten die Studenten

このような格変化をする名詞については、ウィクショナリーでは、語義解説の冒頭で男性弱変化名詞と示した上で、語尾のみ示します。

なお、この他例外的な格変化をする名詞については、その語の語義解説の冒頭部にて解説を行います。

動詞・助動詞 編集

動詞は、主語の人称や単複によって、また時制や語法によって変化します。ウィクショナリーでは、下のような表を用いて動詞・助動詞の活用を表記しています。

活用 人称 語形
現在 ich 1人称単数現在形
du 2人称単数現在形
er, sie, es 3人称単数現在形
過去 ich 過去基本形
過去分詞 過去分詞
接続法第2式 ich 接続法II
命令法 du 2人称単数(親称)に対する命令法
ihr 2人称複数に対する命令法
助動詞
完了助動詞
すべての活用: 活用 その他の活用

現在形 編集

動詞の基本的な形態を不定詞といいます。語尾は一般に-enです。これより前の部分を語幹といいます。

例) lernen: lern + en

この不定詞が語尾に来る句を不定詞句といいます。不定詞句においては、語順は日本語と似ており、たとえば次のようになります。

例) Deutsch lernen (ドイツ語を学ぶ)

現在形は、現在のことや、普遍の原理、現在進行中のことを表します。人称に応じて、基本的には語尾が次のように変化します。

現在形・規則動詞
人称 語尾
ich -e
du -st
er -t
wir -en
ihr -t
sie -en

ichは1人称単数、duは親称2人称単数、erはsieとesも含めて3人称単数、wirは1人称複数、ihrは親称2人称複数、sieは3人称複数と敬称2人称Sieの場合を表しています。 しかし、duとerについてはこれとは異なる変化をする動詞が多数存在するため、人称変化についてはそれぞれの動詞について表をつけて示します。

過去形・過去分詞 編集

動詞の過去形も人称変化をしますが、その基本となる形を過去基本形といいます。ウィクショナリーでは、過去基本形をそれぞれの動詞について示します。人称変化は、過去基本形に続けて次のように語尾を付けます。

過去形
人称 語尾
ich -
du -st
er -
wir -(e)n
ihr -t
sie -(e)n

過去分詞もそれぞれの動詞について示します。

助動詞 編集

完了形を作る時に用いる助動詞はseinまたはhabenです。この使い分けについても、それぞれの動詞について示します。