「付録:アイヌ語の発音表記」の版間の差分

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==子音==
;{{Lang|ain|k}}
;k
:{{ja}}の「カ行」とほぼ同じ {{phone|k}}。有声音(濁音)化する {{phone|ɡ}}。{{Lang|ain|ki}} は{{ja}}「キ {{phone|kʲi, kçi}}」と異なる。有声音化しても、{{ja}}の語中の g のように鼻音化 {{phone|ŋ}} しない。末音は入声(内破音)。末音は樺太方言では {{Lang|ain|x}} になる(後ろの母音と連声すると本来の {{Lang|ain|k}} に戻る)。
;{{Lang|ain|t}}
;t
:{{ja}}の「タ行」とほぼ同じ {{phone|t}}。有声音(濁音)化する {{phone|d}}。{{Lang|ain|ti}} は{{ja}}と同様 {{Lang|ain|ci}} になる。末音は入声(内破音)。末音は樺太方言では {{Lang|ain|x}} になる(後ろの母音と連声すると本来の {{Lang|ain|t}} に戻る)。
;{{Lang|ain|p}}
;p
:{{ja}}の「パ行」とほぼ同じ {{phone|p}}。有声音(濁音)化する {{phone|b}}。末音は入声(内破音)。末音は樺太方言では {{Lang|ain|x}} になる(後ろの母音と連声すると本来の {{Lang|ain|p}} に戻る)。
;{{Lang|ain|h}}
;h
:{{ja}}の「ハ行」とほぼ同じ {{phone|h}}。有声(濁音)はない。{{Lang|ain|hi}} は{{ja}}と同様「ヒ {{phone|çi}}」になる。{{Lang|ain|hu}} も{{ja}}と同様「フ {{phone|ɸu̜}}」になる。末音には置かれない。
;{{Lang|ain|s (sh, š)}}
:{{ja}}の「サ行」「シャ行 {{phone|ʃ, ɕ}}」とほぼ同じ {{phone|s}}~{{phone|ʃ}}。有声音(濁音)はない。{{Lang|ain|si}} は{{ja}}と同様「シ {{phone|ʃi}}」になる。末音はすべて {{phone|ʃʲ}}。末音は樺太方言では {{Lang|ain|x}} になる(後ろの母音と連声すると本来の {{Lang|ain|s}} に戻る)。字母 {{Lang|ain|š}} は、{{phone|s}} ではなく {{phone|ʃ}} と発音してほしいときのレトリック(修辞法)。{{lang|la|s}} のカロン(キャロン)。
;{{Lang|ain|y}}
;y
:{{ja}}の「ヤ行」とほぼ同じ {{phone|j}}。{{ja}}では廃れた {{Lang|ain|ye}} もある。{{Lang|ain|yi}} が存在するかどうかは諸説ある。末音では二重母音になる(後ろの母音と連声すると続く音節の頭子音 {{Lang|ain|y}} になる)。
;{{Lang|ain|w}}
;w
:{{ja}}と「ワ行」とほぼ同じ {{phone|w}}。{{ja}}では廃れた {{Lang|ain|wi, we}} もある。{{Lang|ain|wu}} が存在するかどうかは諸説ある。末音では二重母音になる(後ろの母音と連声すると続く音節の頭子音 {{Lang|ain|w}} になる)。
;{{Lang|ain|m}}
;m
:{{ja}}の「マ行」とほぼ同じ {{phone|m}}。末音にも置かれる。末音も {{phone|m}} のままで、{{ja}}のように「ン {{phone|ɴ, ɴ̩, n, n̩, ŋ, ŋ̩, ɲ, ɲ̩, ɯ, w, _ⁿ, _̃}} 等」にはならない。
;{{Lang|ain|n}}
;n
:{{ja}}の「ナ行」とほぼ同じ {{phone|n}}。{{ja}}の「ニ {{phone|ɲi}}」ほどではないが、{{Lang|ain|ni}} は若干口蓋化して {{phone|nʲi}} になる。{{Lang|ain|k}} の前では {{phone|ŋ}} に、{{Lang|ain|p}} の前では {{phone|m}} になる。末音にも置かれる。末音も {{phone|n}} のままで、{{ja}}のように「ン {{phone|ɴ, ɴ̩, m, m̩, ŋ, ŋ̩, ɲ, ɲ̩, ɯ, w, _ⁿ, _̃}} 等」にはならない。
;{{Lang|ain|r}}
;r
:{{ja}}の「ラ行 {{phone|ɺ̠}}」 とは異なる。無声音化する。末音になる。事前の円唇を伴わないので{{en}}(米語)の {{lang|en|r}} {{phone|ɹ}} とも違う。
:* 舌の先は1回だけ歯茎に触れる。
:*:より正確には触れるというよりも舌先でタップするのである。タップとは{{ja}}の「[[したうち|舌打ち]]」「{{ふりがな|舌鼓|したつづみ}}」にあたる。声を出さずに舌打ちをすると「タッ」とも「ツッ」とも聞こえる({{en}}では {{lang|en|[[tut-tut]]}})タップ音がする。神謡における{{ain}}の {{Lang|ain|r}} では実際にタップ音が聞かれることもあるが、話し言葉ではそれよりも弱くタップすると同時か少し早めに母音を発声するのである。
:* {{phone|l}} よりは {{phone|r}} に近い {{phone|ɾ}}。
:* 語頭では、「{{phone|t}} と {{phone|d}} の中間の音」と、さらに {{phone|ɾ}} との中間音に聞こえる。
:*:21世紀初頭の今から3~4世代程度昔の{{ja}}話者が、{{lang2|en|radio}}: radio を「ダヂオ」に近く発音していたことに似る。
:* {{Lang|ain|n}} の後では、{{phone|d}} に近い {{phone|<sup><small>d</small></sup>ɾ}}。
:* {{Lang|ain|k, p}} の後では、無声音化して {{phone|ɾ̊}}。
:* {{Lang|ain|t}} の後では、無声音化し、更に摩擦を帯びる {{phone|ɾ̊ˢ}}。
:* {{Lang|ain|s}} の後では、完全に無声摩擦の {{phone|ɾ̊s}}。
:* 末音は前の母音に影響されて {{Lang|ain|a, i, u, e, o}} を伴うように聞こえるが母音はない。
:*:上記のタップ(舌打ち)を母音を発声し終わる直前に行うのである。うまくいかずに {{Lang|ain|r}} の後に母音が来るよりも、むしろ母音の発声を止めた直後にタップするのでもよい(無声の {{Lang|ain|r}} になる)。
:* 樺太方言では、末音 {{Lang|ain|x}} になる(後ろの母音と連声すると本来の {{Lang|ain|r}} に戻る)。
;{{Lang|ain|c (ch, ts; j, dz)}}
:{{ja}}の「チャ行 {{phone|ʧ, ʨ}}」「ツァ行」とほぼ同じ {{phone|ʧ}}~{{phone|ʦ}}。有声音化する {{phone|ʤ}}~{{phone|ʣ}} が、慣例ではそれを一意に表現する字母がない(j({{Lang|ain|j, dz}} 等が使われる)。末音には置かれない。{{Lang|ain|ci}} は「ツィ {{phone|ʦi}}、ヅィ {{phone|ʣi}}」にはならずに、常に「チ {{phone|ʧi}}、ヂ {{phone|ʤi}}」。
;{{Lang|ain|x}}
;x
:{{ja}}の「ハ行」を'''強くささやいた'''発音に似る {{phone|x}}。{{Lang|ain|i}} の後では「<small>ヒ</small> {{phone|ç}}」になる(字母 {{Lang|ain|ç}} と混同しないこと)。樺太方言(タライカを除く)の末音のみに存在する。
;{{Lang|ain|ç}}
:北海道東部・北部方言とその他の方言の間に語源的関係を示すときのレトリック(修辞法)。{{lang|la|c}} のセディーユ。北海道東部方言では {{Lang|ain|s}} に等しく、その他の方言では {{Lang|ain|c}} に等しい。
;{{Lang|ain|2={{'}}}}
:そこに本来音があったことを示すレトリック(修辞法)。アポストロフィ。本来あった音は、{{Lang|ain|i, u, h, y}} など。主に北海道南部方言・北部方言で使われる。
;{{Lang|ain|ø}}
:そこに本来音がないことを示すレトリック(修辞法)。ゼロ。主に文法上使われる。
 
* 末音は、後ろに母音が来ると連声(リエゾン)する=次の音節の頭子音になる。樺太方言の末音 {{Lang|ain|x}} も連声すると本来の {{Lang|ain|k, t, p, s, r}} に戻る。連声すると、次の音節の頭子音になる。
 
==母音==