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<!--*******この文では小簾は人名なのでしょうか。
********語誌を書いた青田です。Google books で原文を読んでいただければわかりますが、人名(女性)です。できれば書き変える前に「議論」ページでやりとりしましょう。-->
#:「昭和十年六月二十三日、ホルステンゴール附近に於て外蒙兵不法越境し、作業中の關東軍測量手及び露人一名その他機材を'''拉致'''した。」[https://books.google.co.jp/books?id=ObK10wWEdUYC&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (日蘇通信社『蘇聯邦年鑑 日滿支ソ關係の部』1940年)]
#人材を招き集めること。羅致」の通用表記ないし誤表記<ref>[http://www.ninjal.ac.jp/event/specialists/project-meeting/files/JCLWorkshop_no4_papers/JCLWorkshop_No4_08.pdf 『太陽コーパス』における漢語表記の多様性 - 国立国語研究所]</ref>。
#:「今後なほハイスクールの學生を醫學校に'''拉致'''する必要のありとせば」 [http://books.google.co.jp/books/about/%E5%8C%97%E7%B1%B3%E5%90%88%E8%A1%86%E5%9B%BD%E5%8F%8A%E5%8A%A0%E5%A5%88%E5%A4%AA%E3%81%AB%E6%96%BC%E3%81%91%E3%82%8B.html?id=yRFZK1A2TikC (文部省『北米合衆国及加奈太に於ける医学教育』1918年)]
#:「以前は、農民を'''拉致'''せんがために、面白き話を聞かする事に骨を折りしも」 [http://books.google.co.jp/books?id=3X-_VDuMWzoC&dq=%E7%B1%B3%E5%9B%BD%E3%81%AB%E6%96%BC%E3%81%91%E3%82%8B%E8%BE%B2%E6%A5%AD%E6%95%99%E8%82%B2&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (文部省実業学務局『米国に於ける農業教育』1919年)]
#誰かの言葉を資料として引くこと。引用。
#:「吾人は吾人の記憶を新にせんが爲には、今更に該決議を再び'''拉致'''し來るの必要なるを覺ゆる」[https://books.google.co.jp/books?id=1c2xt9XmjbcC&dq=%E8%AA%BF%E6%9F%BB%E6%99%82%E5%A0%B1%E3%80%80%E3%80%80%E7%AC%AC%E5%85%AD%E5%B7%BB%E7%AC%AC%E5%8D%81%E4%B8%80%E8%99%9F&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (満鐵調査課「治外法權會議の顚末」『調査時報』第六巻第十一號、1926年)]
#連れて来ること。招くこと。引致。招致。
#:「臍の緒切つて初めて茶席に入る者なりと自稱する荒大名なるを、何の苦も無く茶席に'''拉致'''(らち)し來りたる當主人の腕力には只管驚嘆の外無かつた」[http://books.google.co.jp/books?id=w1tmLgB3BiAC&dq=%22%E3%82%89%E3%81%A1%22%E2%80%9D%E6%8B%89%E8%87%B4%E2%80%9D&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (高橋義雄『丙寅 大正茶道記』1928年)]
#:「今日も其様な意見を述べしむる爲に、井關理事が小生を'''拉致'''せられたことゝ思ひます」[https://books.google.co.jp/books?id=x4o34p2sZnsC&dq=%E6%A3%AE%E5%8F%B3%E4%BD%9C%E3%80%8E%E9%9B%BB%E6%B0%97%E4%BA%8B%E6%A5%AD%E7%A0%94%E7%A9%B6&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (森右作『電気事業研究』1923年)]
#:「君は政府筋には餘り持てないやうであるが、その代りに國民には大いに持ててゐる。否少なくも持てる資格を具へてゐる。我が國第一の大新聞社が夙に君を'''拉致'''し去つたのでもわかる」(湯原元一『易水想波』1928年)
#引き寄せること。
#:「是れまで對米外交談判に見ても、始終老中の意見は、直接交渉の任に在つた應接掛の意見に'''拉致'''されたの観があつたのであるが」[https://books.google.co.jp/books?id=fNWOlRz0_EwC&dq=%E6%8B%89%E8%87%B4%E3%80%80%E6%A8%AA%E6%B5%9C%E5%B8%82%E5%8F%B2%E7%A8%BF%E3%80%80%E6%94%BF%E6%B2%BB%E7%B7%A8%E4%BA%8C&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (横浜市役所『横浜市史稿 政治編二』1931年)]
#捕えて役に就けること。徴用。
#:「これを奇貨可居となし私服軍人や公安局員が、良民をオドかして軍夫に'''拉致'''するマネをして金錢をせしめた」[https://books.google.co.jp/books?id=I6SqiPFPctsC&dq=%E4%B8%80%E8%89%B2%E5%BF%A0%E6%85%88%E9%83%8E%E3%80%8E%E6%94%AF%E9%82%A3%E7%A4%BE%E6%9C%83%E3%81%AE%E8%A1%A8%E8%A3%8F&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (一色忠慈郎『支那社會の表裏』1931年)]
#捉えること。捕捉。
#:「營業收益税の免税點以下のものを摑へることと營業收益税の賦課をうけない營業を'''拉致'''することを目的としている」[https://books.google.co.jp/books?id=3TTANmngvm8C&dq=%E7%A7%9F%E7%A8%8E%E8%AA%AD%E6%9C%AC%E3%80%8F%E4%B8%80%E5%85%83%E7%A4%BE&hl=ja&source=gbs_navlinks_s (大阪毎日・東京日日新聞社エコノミスト部『租税読本』1937年)]
# [[暴力]]や[[脅迫]]で人を[[無理矢理]]連れ去ること。違法な拘引。人身の略取。(※英語の abduction, kidnapping の訳語のごとく用いる)
#:「つづいてそこへどかどかと捕吏や武士など大勢、土足のままはいって来た。否応もない。陳大夫父子は、その場から'''拉致'''(らっち)されて行った」(吉川英治『三国志』「草莽の巻」)
 
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*1927年の幸田露伴「暴風裏花」(『竜姿蛇姿』所収)では「拉致」に「らふち」というルビが付されている。しかし1943年の『史傳小説集』では「らち」に改められている。
*「らち」という読みがいつごろ現れたかは不明であるが、上記の『丙寅 大正茶道記』など戦前の出版物にもすでに「らち」とルビを振った例が見られる。また日本放送協会が1939年に作成した内部資料『放送用語調査委員会決定語彙記録』によれば、当時のラジオ放送では「らち」と読まれていた<ref>[http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2009_02/090205.pdf 『戦前の放送用語委員会における“伝統絶対主義”からの脱却』 - NHK放送文化研究所]</ref>。
 
===意味の変遷===
*現在は「人を」「無理矢理に」連れ去ることのみを指す。かつては対象をを問わず、また強制的であるか否かを問わず漠然と「引っぱってくること/引っぱってゆくこと」という意味で使われていた。
*戦前には「羅致」の通用表記のように用いられた例がある(上記)。逆に「羅致」は「拉致」のように用いられることがあった。(森鴎外『かのやうに』1912年、『大塩平八郎』1914年)