臭い物に蓋をする(「臭いものに(は)蓋」のみでも成立)
- 悪事や失敗、醜聞など、都合の悪いことが、他に漏れて世間に知られないように、根本的な解決をはかることなく、一時的にその場しのぎの方法で隠そうとすること。悪臭の元を絶たないで容器の蓋を閉め、悪臭が漏れるのを防ぐということから。
- そして、詮じつめれば、いづれも、単純な自己中心の物の考へ方、「その場のがれ」といふ怠惰因循な精神の反射的な欲求が根本になつてゐると思はれます。「いい子になる」こと、「人にいやな顔をされない」こと、「臭いものに蓋をする」こと、これが、日本人大多数の処世の道とさへ言ひきれるでせう。それも、つねに目前の効果を計算にいれてゐますから、自分と相手との関係によつて、その出かたはいろいろです。(岸田國士 『S夫人への手紙』)
- 上方いろはがるた:臭い物に蝿がたかる(くさいものに蝿)、腐っても鯛
- 尾張いろはがるた:果報(くゎはう)は寝て待て
- 幸田露伴『東西伊呂波短歌評釈』
- 東のは臭腐のもの須らく之を掩ふべきを云ひ、西のは穢は又おのづから穢を引きて、臭物の蒼蝿を致すことを云へり。古は西の短語「くさいものに蝿」と無くして「くさつても鯛」とありし由、今のかるたにも、画には鯛を描けり。腐つても鯛と云へる諺は余り好ましからず。