あかぼしの【明星の】
- 「明く」、「飽く」にかかる枕詞。
- 世の人の 貴み願ふ 七種の 宝も我は 何為む 我が間の 生れ出でたる 白玉の 吾が児古日は 明星の 明くる朝は 敷妙の 床の辺去らず 立てれども 居れども 共に戯れ 夕星の 夕になれば いざ寝よと 手を携はり 父母も 上はな離り 三枝の 中にを寝むと 愛しく 其が語らへば 何時しかも 人と為り出でて 悪しけくも 善けくも見むと 大船の 思ひ憑むに 思はぬに 横風の にふふかに 覆ひ来れば せむ術の たどきを知らに 白妙の 手襁を掛け 真十鏡 手に取り持ちて 天つ神 仰ぎ乞ひ祷み 地つ神 伏して額づき かからずも かかりも 神のまにまにと 立ちあざり 我が乞ひ祷めど しましくも 快けくは無しに 漸漸に 容貌つくほり 朝朝 言ふこと止み たまきはる 命絶えぬれ 立ちをどり 足摩り叫び 伏し仰ぎ 胸打ち嘆き 手に持てる 吾が児飛ばしつ 世間の道(山上憶良)――窪田空穂「萬葉集評釈 巻第五(904)」『窪田空穂全集』第15巻(万葉集評釈 第Ⅲ)、角川書店、1966年6月、141-142頁。