処 士(しょし)
- 十分な学才があるのに、官に仕えず、在野の者。
- むかし斉の田横は、一処士の身にありながら、漢の高祖にも降らず、ついに節操を守って自害しました。(吉川英治 『三国志 赤壁の巻』)
- 椽側から拝見すると、向うは茂った森で、ここに往む先生は野中の一軒家に、無名の猫を友にして日月を送る江湖の処士であるかのごとき感がある。(夏目漱石『吾輩は猫である』)
- 「浪人」「浪士」の雅称。
- 処士とはいっても所の領主、松平大和守には客分として、丁寧にあつかわれる立派な身分、ことには自分が贔屓にしている、高萩の猪之松の剣道の師匠――そういう逸見多四郎であった。(国枝史郎 『剣侠』)
- 上田立夫と四郎左衛門とは、時機を覗うかゞつて横井を斬らうと決心した。しかし当時の横井はもう六年前の一藩士では無い。朝廷の大官で、駕籠に乗つて出入する。身辺には門人や従者がゐる。若し二人で襲撃して為損じてはならない。そこで内密に京都に出てゐた処士の間に物色して、四人の同志を得た。(森鴎外 『津下四郎左衛門』)