動 揺(どうよう)
- 揺れ動くこと。
- しかもその人波は、三鞭酒(シヤンパアニユ)のやうに湧き立つて来る、花々しい独逸管絃楽の旋律の風に煽られて、暫くも目まぐるしい動揺を止めなかつた。(芥川龍之介『舞踏会』)
- 体制などが揺らぐこと。
- この点からいっても、今度の事件のためにソヴェート政権に大きな動揺が生ずるとは想像されない。(三木清 『政治の論理と人間の論理』)
- 心配などにより気分が揺れ動き、不安な気持ちになること。
- 明治期から大正期にかけては、精神状態を付加して用いられていたが、昭和期以降、単独で心理的状態を意味するようになった。
- 私の腹の中には始終先刻の事が引っ懸っていた。肴の骨が咽喉に刺さった時のように、私は苦しんだ。打ち明けてみようかと考えたり、止した方が好かろうかと思い直したりする動揺が、妙に私の様子をそわそわさせた(夏目漱石『こゝろ』)
- (揺れ動くこと)静止
- (体制が揺らぐこと)安定
- (気分が揺れ動くこと)平静
- サ行変格活用
- 動揺-する
- 揺れ動く。
- そうして顔を洗うために鉢の水が動揺すると、この水の定常振動と同じ週期で一種の楽音を発することがしばしばある。それでよく気をつけて見ると、これは鉢の縁とコップとの摩擦によって起こる鉢の振動のためらしい事がわかった。(寺田寅彦『日常身辺の物理的諸問題』)
- 心配などにより不安な気持ちになる。
- 黒船と聞いて、人心が動揺しないわけにはゆきません――鯨ならば、 七浦をうるおすということもあるが、黒船では、当時の日本国を震愕させるだけの価値はある。(中里介山 『大菩薩峠』)