暗 澹(あんたん タリ活用・タルト活用)
- 薄暗く不明瞭なさま。
- ゲーテは陰鬱な故郷の気候を逃れ、太陽を求めて伊太利へ馬車を走らせてゐるが、彼の魂の奥底では、太陽は異郷の空にあるのではなく、いつも故郷の暗澹たる雪空の裏側に住なれてゐたのであらう。(坂口安吾 『北と南』)
- 将来が見通せず不安であるさま。
- 例へば、歌舞伎、新派が発展の道なく、これに代るべき新劇が近来生気を失ひ、このままだと、正統演劇の将来は誠に暗澹たるものだといふやうな考へが一般に拡がつて、これを救ふ道如何が、今や劇壇の彼方此方に論議されてゐる。(岸田國士 『周囲に聴く』)