滂 沱(ぼうだ)
- 雨が強く降る様。
- 吾は長立して凝滞すること多時、覚えず傘を揮って天を劃し、快哉を絶叫すること幾度、余響未だ収まらざるに、風颯とおとし来りて、冷気習々、倏にして雨車軸を流し、滂沱たる雨声を乱して、時に殷々たる迅雷の響き渡れるさへあるに、坤軸をも震はしつべき暴風は、轟々として谷中より起り、陰霧を駆り暗雲を走らせ、四近の老木を捲いてさかしまに吹き上ぐれば、枝は凄まじく鳴り渡りて、木の葉ちぎれ飛ぶこと百千の蝗の如く、何処ともなく木魅の嘯くに似たるを聞く。(木暮理太郎 『木曾駒と甲斐駒』)
- 涙がとめどなく流れる様。
- 幾多の顔の、幾多の表情のうちで、あるものは必ず人の肺腑に入る。面上の筋肉が我勝に躍るためではない。頭上の毛髪が一筋ごとに稲妻を起すためでもない。涙管の関が切れて滂沱の観を添うるがためでもない。(夏目漱石『虞美人草』)
滂 沱(pāngtuó)
- 雨が強く降る様。
- 涙がとめどなく流れる様。