さながら【宛ら】
- (下に比喩表現を伴って)まるで。あたかも。ちょうど。
- 水郷柳河はさながら水に浮いた灰色の柩である。(北原白秋「水郷柳河」)
- そのまま。そのままの状態で。もとのまま。
- 帰り入りて探りたまへば、女君はさながら臥して。(紫式部「源氏物語」夕顔)
- 残らず全部。すっかり。悉く。
- 七珍万宝さながら灰燼となりにき。(鴨長明「方丈記」)
- (下に打消語を伴って)全く〜ない。
- 人に交はれば、言葉よその聞きに従ひて、さながら心にあらず。(吉田兼好「徒然草」)
さながら【宛ら】
- そのまま。
- 存在して、しかも存在のさながらの姿より隔てられているという嘆き。存在のふるさとに還りたきのぞみ。それがわれわれの「今」であり、「ここ」であり、「自分」の露(あら)わな現(うつ)つである、と彼はいう。(中井正一「絵画の不安」)
- (体言に後続して)そのまま。そっくり。同然。
- 遙かに相對してゐる山々はほんのりと霞みながらもまだ冬さながらの粧ひである。(相馬御風「獨愁」)