だれだれ【誰誰・誰々】
- 複数の人たちを特定せずに表す人称代名詞および疑問代名詞。だれとだれ。だれかとだれか。
- 1925年、岡本綺堂「窯変」[1]
- それはどんな人たちだと訊くと、新聞とかいた白い布を腕にまいていたと言う。それでは従軍記者諸君に違いないが、いったい誰々だろうかと思って、ちょっとその顔ぶれを見に来たのですよ。
- 1926年、小酒井不木「白痴の知恵」[2]
- 「いいえ、祭りの組は五つに別れているのです。私たちの組は二十軒ばかりです」
- 「すると二十人ばかりの人が集まったのだね? 集まった人は誰々だか分かっているかね?」
- 「分かっております」
- 1930年、戸田豊子「鋳物工場」[3]
- 「松金で一体何があったんです?」
- 「酷い騒ぎだったよ、つい今しがた、十何人も病院へ担ぎこまれたんだ、何しろ、斬りつけたんだからね。」
- 「えッ? 誰々がやられたんです?」
- 疑問代名詞的用法を持たない、一人の人物を特定せずに表す人称代名詞。主に、具体名を本当に知らない場合ではなく、具体名をそもそも挙げる必要がない場合や具体名を知っているが伏せたい場合に用いる。一般名詞に置き換え可能な形式で用いられ、助詞の付き方といった用法は代名詞「だれ」よりも一般名詞に近い。敬称の接辞尾を付けることもできる。だれそれ。なにがし。
- 1939年、宮本百合子「これから結婚する人の心持」[4]
- それは、結婚という言葉が、それぞれの実質の高さ低さにかかわらず、何か人生的な落着きという感じを誘い出す点である。誰々さんが結婚するそうよ。まあ、そうお、「誰と?」という好奇心の起る前に、ききての胸にぼんやりと映るのは、それであのひとも落着くという一種の感じではなかろうか。
- 1948年、坂口安吾「私の葬式」[5]
- 私は葬式というものがキライで、出席しないことにしている。礼儀というものは、そんなところへ出席するところにあるとは思っていないから、私は何とも思っていないが、誰々の告別式に誰々が来なかったなどゝ、日本はうるさいところである。
- 1962年、吉田茂「私は隠居ではない」[6]
- 私があなた方のような立場になったとしたら、とても本は出来ませんね。ナニ? 誰々、あれはつまらん奴だ。では誰々、あんなバカに何が書ける。誰々? あれあ、書かなくったって云うことは判ってる、って具合で、頼む相手が無くなっちまうと思うんだが、そうはなりませんかね。