なにがし【某・何某】
- 人や場所、物が特定できない、またはあえて隠す場合に用いる語。
- ペン字のくせに一字一画ゆるがせにしない筆法極めて正確な楷書で、なにがし商店御中とある。で裏を返してみると、これまた奇妙である。/なにがし区なにがし町――といつても、つい先年まではさしづめ武蔵野などと言つてゐたあたりの、なにがし精神病院内、なんのなにがしと書いてある。(坂口安吾「盗まれた手紙の話」)
- (古用法) (主に男性が用いる)わたくし。それがし。
なにがし
- 少々の金額。いくら。
- 昨日、質屋の番頭を説きつけて、寧ろ強奪して、やっと手に入れた二十円なにがしの共有財産の寿命が、按摩賃六十銭丈け縮められることは、此際、確かに贅沢に相違なかったからである。(江戸川乱歩「二銭銅貨」)