ところ【所・処】
- あることをする物理的な空間。場所。
- 何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていた事だけは記憶している。(夏目漱石 『吾輩は猫である』)
- 食う寝るところに住むところ
- (ある人のところ)ある人がいる場所。(住んでいる場所や、いつも仕事をしている場所など)
- (「おところ」の形で)ご住所。
- (他と区別される)集団、コミュニティ。
- 映画界という所は忘れっぽい所である。(伊丹万作 『映画界手近の問題』)
- 所変われば品変わる
- あるものや状況に属する性質の一部分、一状態、一状況。一面。
- 幼いときから内気だった私にとって、お兄ちゃんの陽気で優しいところはとても好きだった。
- リーダーにばかり人気が集まり、結局おいしいところは全部彼に持って行かれてしまった。
- 殊に、教養ある相当年配の婦人に扮する場合、今のまま進んだのでは、大に物足りないところがある。(岸田國士 『抽斗にない言葉』)
- まちの美化活動も、身近なところから始めてみてください。
- 仄聞するところでは、次の人事は大規模なものになりそうだ。
- まあ、そんなところでしょうかね。
- 抽象的な概念の、それを特徴づける性質の一部分。
- 人間の最奥なるところ、之を人間の空と言ひ、造化の最奥なるところ、之を造化の霊と言ふ。(北村透谷 『万物の声と詩人』)
- 論理的な推論の状態、結論。
- そのことについていろいろ考えてみたが、結局同じところに行き着いた。
- 経過中の状態、場面、局面。
- ソーセージと法律は作るところを見ないほうがいい。
- 皆が落ち込んでいたところに、嬉しいニュースが入ってきた。
- 前半の演技ではミスが一つもなくていいところだったのに、最後に大失敗をしてしまった。
- お楽しみのところを申し訳ありませんが、もう少し声を小さくお願いできませんか。
- いま目を覚ましたところだ。
- すぐにも出かけるところだ。
- (多く「ところだった」の形で)実現しそうな状態、場面、局面。
- もう少しでぶつかるところだった。
- おい気をつけろ。事故を起こすところだぞ。
- メダルに手が届くところだったのに、ゴール目前で転倒してしまった。
- 本来あるべき状況。接続助詞のように用いることもある。
- 発言すべきところで発言せず、しなくていいところで発言する。
- 日比谷駅で持ち合わせするところ(を/が)、渋谷駅へ行ってしまったらしい。
- (「動詞 + た」に接続、接続助詞のように用いる)時系列にそって説明するように接続する。
- 試しに電源をつないでみたところ、故障して使えない状態であることが分かった。
- (接続助詞のように用いて)〜のような態度で言うと。〜の観点では。
- 正直なところ、簡単に勝てる相手ではない。
- 私の見たところ(では)、勝機は十分にありそうだ。
- (「ところで」の形で接続助詞のように用いて)逆接、譲歩を表す。〜しても。
- ある行為の対象。
- この際にあたりて、ひとり我が義塾同社の士、固く旧物を守りて志業を変ぜず、その好むところの書を読み、その尊ぶところの道を修め、日夜ここに講究し、起居常時に異なることなし。(福沢諭吉 『中元祝酒の記』)
- 自分の信ずるところによつて急がず騒がず行動してをる。(高浜虚子 『川端茅舎句集 序』)