- ワ行四段活用の動詞である「言ふ」の未然形である「言は」に、受け身の助動詞の連用形の「れ」が付いたものの名詞化。「言われる(に値するだけの)事」の意。
いわれ【言われ・謂れ 歴史的仮名遣い:いはれ】
- いわれること、いうべき理由。
- あなたもよくご存じのように、ほとんど一年じゅう店の外にいる旅廻りのセールスマンは、かげ口や偶然やいわれのない苦情の犠牲になりやすく、そうしたものを防ぐことはまったくできないんです。(フランツ・カフカ 原田義人訳 『変身』)
- 詩の講座のために詩について書いてくれというかねての依頼でしたが、今詩について一行も書けないような心的状態にあるので書かずに居たところ、編集子の一人が膝づめ談判に来られていささか閉口、なおも固辞したものの、結局その書けないといういわれを書くようにといわれてやむなく筆をとります。(高村光太郎 『詩について語らず ――編集子への手紙――』)
- (話のタネに なりうる たぐいの、物事の)起こりや いきさつ(についての言い伝え)。由来。由緒。故事来歴。
- 専ら、その物事に話のタネに なりうる たぐいの何らかの起こりや いきさつが「有る」場合に用いられることが多く、新しく出来た ばかりの寺を「言われ(由緒)の無い寺」などと言うことは出来ない。
- 囲炉裏に榾をさしくべ、岩魚の串刺にしたやつを炙りながら、山林吏が、さっき捨てた土饅頭は何だね、と案内の猟師に訊ねる、旦那、ありゃ飛騨の御大名の墳で、と右の一伍一什をうろ覚えのままに話す、役人は、そんな由緒のあるものと知ったら、何とか方法もあったものをと口惜しそうな顔をした。(小島烏水『梓川の上流』)