九牛の一毛(きゅうぎゅうのいちもう)
- 九頭の牛に紛れた毛を表わし、物の数にも入らないの意。
司馬遷『報任少卿書』(『漢書司馬遷伝』『文選』所録)
【白文】
- 假令僕伏法受誅 若九牛亡一毛 與螻螘何異 而世又不與能死節者比
【訓読文】
- 假令僕の法に伏し誅を受くるも、九牛の一毛を亡なふが若し、螻螘となんぞ異なる。而して、世も又能く節に死せる者と比さず。
【現代語訳】
- もしも、私が法に従って、罰せられたとしても、多くの牛の中から、一本の毛を失ったようなもので、虫けらみたいなものです。結局、世間も節を守って死んだものと比べもしないでしょう。
【解説】
- 司馬遷は、李陵を弁護したため武帝の怒りに触れ、宮刑に処された。司馬遷にとっては、死にも等しい恥辱であったが、世間は些事としか思っていないであろうと記したもの。