日本語 編集

副詞 編集

じて (だんじて)

  1. 否定文で用い、強く確信しているさまを表す。決して絶対に。ゆめゆめ
    • 1923年、国枝史郎「死の復讐」[1]
      何? 僕が老人を殺したって! そんな馬鹿なことは断じて無い! 何んのために老人を殺すんだ?
    • 1934年、北大路魯山人「よい書とうまい書」[2]
      筆なんかどんな筆だって、私ども経験によりますと、同じことであります。筆によってうまい字が書けるというようなことは断じてありませぬ。
    • 1935年、今野大力「胸に手を当てて」[3]
      その時何故、私は言わなかったのだ、「いや断じてちがう、悪人は手前達だ、その背骨をいまに叩き折ってやる!」と
  2. 肯定文で用い、確信または決心しているさまを表す。きっと絶対に。必ず断固
    • 1923年、太宰治「ダス・ゲマイネ」[4]
      僕の目算では、身丈は五尺七寸、体重は十五貫、足袋は十一文、年齢は断じて三十まえだ。おう、だいじなことを言い忘れた。
    • 1925年、豊島与志雄「或る素描」[5]
      いや、もう僕の心はきまってるんだ、指輪を受取る時の彼女の眼付は、そりゃあ綺麗だった。僕はあんな眼付が好きなんだ。断じて結婚してみせる。
    • 1934年、岡本綺堂「海亀」[6]
      君はおそらく迷信家じゃああるまい。僕も迷信は断じて排斥する人間だ。その僕が迷信家に屈伏するようになったのだ。

動詞 編集

断じて (だんじて)

  1. 断じる」連用形+接続助詞「
    • 1934年、柳宗悦「苗代川の黒物」[7]
      雑器である事が、黒物の美を保証しているとむしろ断じていい。私たちは逆にこういいたい、台所で手荒く使えるような品だから、きっとどこか健実な所があろう。
    • 1953年、坂口安吾「中庸」[8]
      根作はこう断じて見栄をきった。農民は意外に弁論に長じているもので、村長に就任以来特に余の痛感したのはこの一事である。

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  1. 青空文庫、2016年3月4日作成(底本:「国枝史郎探偵小説全集 全一巻」作品社、2005(平成17)年9月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000255/files/47425_58915.html
  2. 青空文庫、2020年2月21日作成(底本:「魯山人書論」中公文庫、中央公論新社、2007(平成19)年9月25日3刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001403/files/55052_70448.html
  3. 青空文庫、2014年5月14日作成(底本:「日本プロレタリア文学集・39 プロレタリア詩集(二)」新日本出版社、1987(昭和62)年6月30日初版)https://www.aozora.gr.jp/cards/001471/files/54057_53597.html
  4. 青空文庫、2004年2月23日作成(底本:「走れメロス」新潮文庫、新潮社、1989(平成元)年6月10日50刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/42945_14904.html
  5. 青空文庫、2007年11月27日作成(底本:「豊島与志雄著作集 第二巻(小説Ⅱ」未来社、1965(昭和40)年12月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/42437_28813.html
  6. 青空文庫、2005年6月26日作成(底本:「異妖の怪談集 岡本綺堂伝奇小説集 其ノ二」原書房、1999(平成11)年7月2日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/files/43542_18865.html
  7. 青空文庫、2020年3月28日作成(底本:「柳宗悦 民藝紀行」岩波文庫、岩波書店、2012(平成24)年6月15日第9刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001520/files/56747_70767.html
  8. 青空文庫、2010年2月5日作成(底本:「坂口安吾全集 14」筑摩書房、1999(平成11)年6月20日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42949_38172.html