望蜀(ぼうしょく)
- あるものを苦労して得ても、その苦労を忘れ別のものをほしがること。人の欲望に限りがないこと。
- 要するに家塾を譲ると云ふことと、菅氏を名乗らせて阿部家に仕へさせると云ふこととの間には、初より劃然とした差別がしであつた。後に至つて山陽の「上菅茶山先生書」に見えたやうな問題の起つたのは、福山側の望蜀の念に本づく。(森鴎外『伊沢蘭軒』)
後漢書岑彭伝
- (白文)
- 人苦不知足、既平隴、復望蜀、毎一發兵、頭鬚為白。
- (訓読文)
- 人足るを知らずして苦しむ、既に隴を平らげ、復た蜀を望む、一たび兵を發する毎、頭鬚は白み為り。
- (現代語訳)
- 人というものは、満足することを知らないために苦しむものである、ようやく、隴を平定したかと思えば、すぐに蜀を得ようとする。出兵する毎に、心配で髪と鬚に白いものが増えることである。
- (解説)
- 後漢の光武帝が、自責の念とあわせ岑彭へ送った書簡に見られる言葉。 三国志において、曹操が、積極策をとろうとする司馬懿を戒める句として引用される。