沈 魚 落 雁 (ちんぎょらくがん)
- 美人の形容。
- 然るに西洋では、是に反して、表情を主とし、表情が欠けてゐては美人でないとしてあるのである。だから西洋の美人の形容詞には、東西共通の、沈魚落雁、閉月羞花とか、花顔柳腰明眸皓歯とかといふ美人に共通の資格の外に、「動」といふものが美人の美人たる資格の内に含まれてゐるのである。(堀口九萬一 『東西ほくろ考』)
- もとの意義人の美を形容したるにはあらざるべき沈魚落雁などいふ語の、美を形容する套語となれる如く、いとをかしき誤謬なり。(幸田露伴『雲のいろ/\』)
- 『荘子‧斉物論』:「毛嬙、麗姬、人之所美也。魚見之深入、鳥見之高飛、麋鹿見之決驟、四者孰知天下之正色哉。(大意:人の世でどんなに美人と評価されても、魚や鳥獣はそれを見て逃げるものだ。価値は受け取るものにより異なり一様でない)」の一文から翻って、「そのように人にあえば逃げる魚や鳥獣も、美しさに魚が泳ぐことを忘れ沈み、鳥(雁)は飛ぶことを忘れ落ちてしまうほどの美人」と洒落たもの。