苦 味(くみ・にがみ[注 1])
- 苦い味、またはその程度。
- 百姓たちが桃畑の草をとつて畑つゞきの松林の蔭に捨て、毎年捨てられた草が腐つて所謂腐草土となり、その腐草土の下にこの野蒜は生えてゐたのである。しかも無數に生えてゐる。ざつと茹でて、酢味噌でたべる。いかにも春の初めらしい匂ひと苦味とをもつた、風味あるものである。(若山牧水『家のめぐり』)
- 不愉快な気持ち。また、その様子。
- 例えば自分があの乞食であって門から門へと貰って歩くとする。どこの玄関や勝手口でも疑いと軽侮の眼で睨まれ追われる。その屈辱の苦味をかみしめて歩いているうちに偶然ある家へはいると、そこは冷やかな玄関でも台所でもなくそこに思いがけない平和な家庭の団欒があって、そして誰かがオルガンをひいていたとする。(寺田寅彦『小さな出来事』)
- 男の顔の引き締まっている様。
- 客のなかの湊というのは、五十過ぎぐらいの紳士で、濃い眉がしらから顔へかけて、憂愁の蔭を帯びている。時によっては、もっと老けて見え、場合によっては情熱的な壮年者にも見えるときもあった。けれども鋭い理智から来る一種の諦念といったようなものが、人柄の上に冴て、苦味のある顔を柔和に磨いていた。(岡本かの子『鮨』)
- NHK
- クミ
- ニカ゚ミ
苦 味 (ピンイン:kǔwèi 注音符号:ㄎㄨˇ ㄨㄟˋ)
- 苦い味。