食指(しょくし)
- 「人差し指」の異称・漢語表現。
- 螽の如く蹲んだ男は、平たい顏を俯向けて、右手の食指で砂の上に字を書いて居る。(石川啄木 『漂泊』)
- ただ、私は私の左の手の食指から、絹糸のやうなものが、いつもたれさがつて居るのをいつしんふらんにみつめて居る。(萩原朔太郎 『散文詩・詩的散文』)
- (比喩 「食指が動く」より)興味、嗜好、野心。
- けれども今もなお私は「月ケ瀬」のぶぶ漬に食指を感ずるのである。(織田作之助 『大阪発見』)
- 短かい髪を二ツに割けて、三ツ編のお下げにし、華やかな洋装となった錦子の学校通いは、神田、本郷の書生さんたちの血を沸騰させた。美妙斎の食指のムズムズしないわけはない。(長谷川時雨 『田沢稲船』)
- こっそり米を買い込む算段ならすれば出来るが、私も内心この村の批評をしたい食指いまだに失うことが出来ないので、批評をするからは、やはり少しは欲を抑える忍耐が必要になって力が要る。(横光利一 『夜の靴 ――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)』)