不悉 (ふしつ)
- 思っていることを十分に言い尽くさないこと。
- これは思想の誠正偉大なるにもよるが、一つは其の文章の簡潔にして含蓄多く、不言不悉の妙味もあるが為めである。――五十嵐力『新文章講話』早稲田大学出版部、1916年8月、縮刷7版、348頁。
- それは行政が実際に適用すべき法律又は命令に其の拠るべきの準則が全然闕如してゐるか、若くは其の規定が不備不悉なる場合である。――織田万『日本行政法原理』有斐閣、1934年4月、82頁。
- 手紙の末尾に添える言葉。不一。不尽。
- 失礼ですがあなた大変奇麗で読み易い字を御書きになります私は此通り乱暴です御推読を願ひます 不悉――夏目漱石「大正三年」『漱石全集』第17巻(続書簡集)、漱石全集刊行会、1937年2月、424頁。
- 往事を追懐して感慨止むなし。足下其れ亦吾が心を知るあらん。匆々不悉。三月廿七日。――「野山獄文稿」『吉田松陰全集』第4巻、山口県教育会編、岩波書店、1938年11月、28頁。