アイヌ語

編集

カナ表記 ア・

人称接辞

編集

雅語 一人称単数/複数 主格 名詞・他動詞/2・3項動詞/第I類動詞に接頭する形。

  1. (文語、引用文、物語の中で)が。われが。我等われらが。我々が。

例文

編集
  • a=siki(hi) ア・シキ(ヒ) 「我(等)が目、我(等)の目」
  • isepo a=nukar イセポ ア・ヌカㇻ 「我(等)ウサギを見る。」

人称接辞

編集

口語 主格 名詞・他動詞/2・3項動詞/第I類動詞に接頭する形。

  1. 一人称複数。(相手を含む)私たちが。
  2. 二人称単数/複数・敬称。(通例女性から男性へ)あなたが。あなた方が。
  3. 不定称。誰かが。(世間の)が。何かが。

例文

編集
  • a=po(ho) ア・ポ(ホ) 「あなた(方)の子」「(あなたを含む)私たちの子」「誰かのお子さん、人のお子さん」
  • a=okay isepo a=nukar ア・オカィ イセポ ア・ヌカㇻ 「あなた(方)は、ウサギを(あなた(方)が)見る。」「(あなたを含む)私たちは、ウサギを(私たちが)見る。」「誰かは、ウサギを(誰かが)見る。」
  • a=okay isepo a=nukar-pa ア・オカィ イセポ ア・ヌカㇻ・パ 「あなた(方)は、ウサギを(あなた(方)が)ご覧になる。」「(あなたを含む)私たちは、ウサギを(私たちが)拝見する。」「誰かは、ウサギを(誰かが)ご覧になる。」
    どの意味かは文脈から判断する。

関連語

編集
  • =an 自動詞/1項動詞/第II類動詞・形容詞に接尾する形。
  • =a= 第III類動詞(合成動詞)に接中する形。
  • i= 目的格 (相手を含む)私たちを、私たちに。

アイヌ語の主格人称接辞(基本)

  1. 北海道西部方言(沙流方言)の例
    • ku= ク・ 一人称単数
      =ku= (連動詞の場合)
    • e= エ・ 二人称単数
      =e= (連動詞の場合)
    • ci= チ・ 一人称複数・相手含まない(他動詞及び名詞の場合)
      =as ・アㇱ (自動詞の場合)
      =ci= ・チ・ (連動詞の場合)
    • a= ア・ 一人称複数・相手含む(他動詞及び名詞の場合)
      =an ・アン (自動詞の場合)
      =a= ・ア・ (連動詞の場合)
    • eci= エチ・ 二人称複数
      =eci= (連動詞の場合)
    • ø= 無音 三人称単数/複数
    • a= ア・ 不定人称(他動詞及び名詞の場合)
      =an ・アン (自動詞の場合)
      =a= ・ア・ (連動詞の場合)
  2. 敬称
    • a= ア・ 二人称単数/複数(他動詞及び名詞の場合)
      =an ・アン (自動詞の場合)
      =a= ・ア・ (連動詞の場合)
  3. 神が主人公のyukar
    • ci= チ・ 一人称単数(他動詞及び名詞の場合)
      =as ・アㇱ (自動詞の場合)
      =ci= ・チ・ (連動詞の場合)
  4. 英雄が主人公のyukar、引用文
    • a=(an=) ア・ 一人称単数(他動詞及び名詞の場合)
      =an ・アン (自動詞の場合)
      =a= ・ア・ (連動詞の場合)
  5. 注釈
    • 人称接辞ではないが、三人称単数/複数の敬称を表す方法として接尾辞 -pa を用いる用法がある
    • 知里真志保が使用した文法用語(左側)は概ね下記のように対応する
      第I類動詞->他動詞
      第II類動詞->自動詞
      第III類動詞->他動詞の内、連動詞(連他動詞)と呼ばれる動詞群
      形容詞->自動詞
    • 左側の用語は概ね下記のように対応する
      0項動詞、1項動詞->自動詞(0項動詞を完全自動詞と呼ぶ人もいる)
      2項動詞、3項動詞->他動詞(3項動詞を複他動詞と呼ぶ人もいる)


発音(?)

編集