さばを読む
日本語
編集慣用句
編集さばを読む(異綴:鯖を読む、サバを読む)
- 自分の利益を増やすために、商品などの数量をごまかして伝えること。
- 「通さん己らに蟹文字がよめねへと思って偽を読んじゃアいけねへぜ」(総生寛『西洋道中膝栗毛』)〔1874年-1876年〕
- 正味は四丈八尺ですが、吹聴は五丈八尺という口上、一丈だけさばを読んで奈良の大仏と同格にしてしまいました。 (高村光雲『佐竹の原へ大仏をこしらえたはなし』)〔1852年-1934年〕
- つまりそこ、ここの火薬庫の主任が、一生一代の大きなサバを読んで渡すことがあるそうで、古い話ですが大阪や、目黒の火薬庫の爆発はその帳尻を誤魔化すために遣ったものだとも云います。 (夢野久作『爆弾太平記』)〔1935年〕
- 今はどうサバを読もうと思っても、四十以下には言えぬくらい老けてしまったが、若い頃はこれでも自分に迷って先祖の仏壇を売った男もいるくらい、鳴らしたものだ(織田作之助『土曜夫人』)〔1946年〕
- 問題は、通産省がかつて電力再編成法案を議会に説明された第七国会以来、ずつと通産省が伝統的といわんばかりに、この法案はどんなに圧縮してもこれだけの期間がかかるのだ、こう言つておいでになられた。それが半分くらいに短縮された、これはどういうわけか、通産省がさばを読んだのかという話を私は通産大臣に伺つておるのです。 (神田博、衆議院会議録情報 第010回国会 通商産業委員会 第3号)〔1951年〕
語源
編集語源は諸説あるが、魚屋がたくさんの鯖をまとめて売るときに、(わざと)数え間違って実数より多く言いがちであることから来たものとする説が有力[1][2][3]。
魚市場を意味する「五十集」に由来し、市場で小魚を早口で数えることを「五十集読(いさばよみ)」と言っていたのが元であったとの説もある[4][2][3]。
折口信夫は魚の鯖の説を否定し、仏教用語の「産飯」(そなえものとして盛った飯)から来ているとしている[5]。この説では、「さば」の一部が施しとて撒かれ餓鬼や鳥獣などに与えられるさまから、つまみ食いのことを「さばよみ」と呼ぶようになったとする[3]。
寿司屋が客に寿司を出すとき少量の飯(これを仏教のさばになぞらえた)を飯台の裏につけて数の記録とし後で勘定する行為を「さばを読む」と呼んだのを語源とする説もある[2]。
「さばよみ」の項目も参照。
用法
編集類義語
編集関連語
編集参考文献
編集- ↑ 新井正三郎『現代語新辞典』(1930年)、49ページ
- ↑ 2.0 2.1 2.2 2.3 NHKアナウンス室編『「サバを読む」の「サバ」の正体』(2014年)、222・223ページ
- ↑ 3.0 3.1 3.2 太田静行「さば(鯖)」『調理科学』 Vol. 15 (1982) No. 3 p. 175-178
- ↑ 日国ことばクイズ連載・日本語塾 第92回 問題460(2004年)
- ↑ 折口信夫『若水の話』(1929年)