慨する
日本語
編集動詞
編集慨する (がいする)
- (他動詞, 自動詞, 文章語) 憤る。嘆く。
- 1903年、村井弦斎「食道楽」[1]
- 「(……)文学界の人は殊に何事も感情任せで蝸牛角上の争いをしているから文筆を以て天下に貢献するような仕事は出来ず、実業界は道義全く地を払って更に信用の重んずべき事を知らん。一々世中の事を点検してみたら誠実という分子は殆どないね」とこの人もまた世に慨する所あり。
- 1916年、穂積陳重「法窓夜話」[2]
- 第十九世紀の初めにおいて、ドイツ諸国はナポレオンの馬蹄に蹂躙せられて、殆んどその独立を失おうとするに至ったが、この時局に慨して、当時ドイツの学者政治家の間には、ドイツの復興策として盛んに民族統一(Volkseinheit)の必要を唱導する者が多かったのである。
- 1923年、豊島与志雄「電車停留場」[3]
- そしてまたその反動として、或る漠然たる正義観念で胸が脹れ上った。電車の中にどっしりと腰を下して、両肱を膝の上に張りながら、世風を慨するといった眼付で、自分の愚かさを自らごまかす気味も加わって、あたりを睥め廻していたのである。
- 1954年、柳宗悦「工藝の道」[4]
- あの金権下の現代工藝を慨して起った作家が、再び彼の作を富める者にのみ贈るとは、いかに奇異な矛盾であろう。
- 1903年、村井弦斎「食道楽」[1]
活用
編集サ行変格活用 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
慨 | し せ さ |
し | する | する | すれ | せよ しろ |
意味 | 語形 | 結合 |
---|---|---|
否定 | 慨しない | 未然形 + ない |
否定 | 慨せず | 未然形 + ず |
自発・受身 可能・尊敬 |
慨される | 未然形 + れる |
丁寧 | 慨します | 連用形 + ます |
過去・完了・状態 | 慨した | 連用形 + た |
言い切り | 慨する | 終止形のみ |
名詞化 | 慨すること | 連体形 + こと |
仮定条件 | 慨すれば | 仮定形 + ば |
命令 | 慨せよ 慨しろ |
命令形のみ |
註
編集- ↑ 青空文庫(2010年8月5日作成、2019年8月1日修正。底本:「食道楽(上)」岩波文庫、岩波書店、2008(平成20)年11月5日第5刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000810/files/49947_40166.html
- ↑ 青空文庫(2001年8月20日公開、2014年7月25日修正。底本:「法窓夜話」岩波文庫、岩波書店、1999(平成11)年9月16日第14刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000301/files/1872_53638.html
- ↑ 青空文庫(2007年8月22日作成。底本:「豊島与志雄著作集 第二巻(小説Ⅱ)」未来社、1965(昭和40)年12月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/42421_28068.html
- ↑ 青空文庫(2014年7月25日作成。底本:「工藝の道」講談社学術文庫、講談社、2011(平成23)年7月20日第3刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001520/files/54957_54058.html