気 味(きみ、やや古:きび)
- (漢語・原義)香りと味、香気と風味。
- 様子。気持ち、心地、気分、心中から発する快又は不快の気持ち。
- 深夜の鏡にチラリとうつる自分の顔は、気味がわるくて、ちゃんと視たことがない。(宮本百合子 『顔を語る』)
- お浜は手早く懐剣を拾い取って、盗み物を隠すように懐中へ入れてみると、胸は山のくずれるような音をして轟きましたけれども、お浜の面には一種の気味のよいような笑いがほのめいて、じっと眼を行燈の光につけたまま失神の体で坐っている。(中里介山 『大菩薩峠 鈴鹿山の巻』)
- 傾向。おもむき、気配。
- 京師室町姉小路下る染物悉皆商近江屋宗兵衛の老母おかんは、文化二年二月二十三日六十六歳を一期として、卒中の気味で突然物故した。(菊池寛 『極楽』)
- 従来やや自己韜晦の気味に居られた氏が、それに満足されずに次第に本質を現わして行かれようとして居ります。(国枝史郎 『マイクロフォン 「新青年」一九二八年二月』)
気 味(ぎみ)
- ある傾向を帯びていること。
- 然し、幸いなことには、ここ一ヶ月は、京都へ旅行し、旅行先で病臥し、帰京後も、かぜが治らず、病臥をつゞけ、あんまりハナをかんで、中耳炎気味で、日々苦しく、まったく外出したことがない。(坂口安吾 『西荻随筆』)
- これは当時の編輯者Y君が、特に臨時別冊発行の予定もあつて、十分に枚数をとれと気前をみせてくれた結果であるが、それでゐて、私は、百三十枚の原稿をやゝ遠慮気味で渡したのである。(岸田國士 『「速水女塾」あとがき』 )
- 多吉はちらりと彼等の方に視線を移したが、見てはならぬものを見たかのやうにすぐ顔を外向けると、幾分頭を垂れ気味にして足を早めた。(北條民雄 『邂逅』 )