古典日本語「はやし」(早し)
はやい【速い・疾い・捷い・早い】
- 単位時間あたりに進む距離が大きいこと。また時間あたりの動作などの量が多いこと。
- 路行く人を押しのけ、跳ねとばし、メロスは黒い風のように走った。野原で酒宴の、その宴席のまっただ中を駈け抜け、酒宴の人たちを仰天させ、犬を蹴とばし、小川を飛び越え、少しずつ沈んでゆく太陽の、十倍も早く走った。(太宰治 『走れメロス』)
- ある時間より前のこと。
- 「おや、そう、それでなくっちゃ、こんなに早く叔父さんが出掛ける事はないわね。いつもなら今時分はまだ寝ていらっしゃるんだわ」(夏目漱石 『吾輩は猫である』)
- あまり時間が経過していない状態。
- すると奥さんが私を引き留めて、もし早い方が希望ならば、今日でもいい、稽古から帰って来たら、すぐ話そうというのです。私はそうしてもらう方が都合が好いと答えてまた自分の室に帰りました。(夏目漱石 『こゝろ』)
- 時期がまだ適切ではないこと。
- ある時間内の訓練が失敗に終ったとしてもあきらめてしまうのはまだ早い。(伊丹万作 『演技指導論草案』)
- (古用法) 川や風などの動きが激しい様子。
活用と結合例
各活用形の基礎的な結合例
意味 |
語形 |
結合
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推量・意志 |
はやかろう |
未然形 + う
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否定形 |
はやくない |
連用形 + ない
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過去・完了 |
はやかった |
連用形 + た
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言い切り |
はやい |
終止形のみ
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名詞化 |
はやいこと |
連体形 + こと
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仮定条件 |
はやければ |
仮定形 + ば
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様態 |
はやそうだ |
語幹 + そうだ
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