日本語

編集

動詞

編集

する (きっする)

  1. (他動詞, 文章語) 食べ物飲み物煙草などを〕口にする食べる飲む吸う
    • 1903年、村井弦斎「食道楽」[1]
      心太を食べて黄粉を舐めると心太が溶けてしまうし、牛肉を食べた後にパインナプルを喫すると消化が速い。
    • 1920年、牧野信一「蚊」[2]
      ある夏の夕暮私は店先の縁台に腰を掛けて煙草を喫しながら往来を眺めて居た時、ふと去年別れた照子の事を想ひ出しました。
    • 1958年、山本周五郎「樅ノ木は残った」[3]
      それから五六日のちの或る夜、夕餉のあとで茶を喫しながら、津多女はさりげない調子で云った。
  2. (他動詞, 文章語) 望ましくないあるいは予想外体験を〕受ける被る
    • 1940年、松濤明「春の遠山入り」[4]
      仁田岳とのコルに近づくと、深さ丈余もあるクレバスがリッジ上に形成されていて一驚を喫する。こんな処を降雪中でも歩くならば、恢り込まないとも限らない。
    • 1946年、太宰治「春の枯葉」[5]
      僕と菊代さんは、お前たちに叛逆をたくらんだが、お前たちは意外に強くて、僕たちは惨敗を喫したんだ。押せども、引けども、お前たちは、びくともしねえ。
    • 1948年、小山清「メフィスト」[6]
      私はただ芸もなく小山清一人のために赤くなった。うかうかと二度の不覚を喫したわけである。

活用

編集
  1. 青空文庫(2010年8月5日作成、2019年8月1日修正。底本:「食道楽(上)」岩波文庫、岩波書店、2008(平成20)年11月5日第5刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000810/files/49947_40166.html
  2. 青空文庫(2011年3月29日作成。底本:「牧野信一全集第一巻」筑摩書房、2002(平成14)年8月20日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000183/files/52891_42666.html
  3. 青空文庫(2018年3月27日作成、2018年9月21日修正。底本:「山本周五郎全集第十巻 樅ノ木は残った(下)」新潮社、1982(昭和57)年12月25日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/files/57786_64363.html
  4. 青空文庫(2015年2月17日作成。底本:「新編 風雪のビヴァーク」山と溪谷社、2000(平成12)年3月20日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000307/files/56895_55999.html
  5. 青空文庫(2005年1月15日作成。底本:「太宰治全集8」ちくま文庫、筑摩書房、1989(平成元)年4月25日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1581_17527.html
  6. 青空文庫(2020年5月27日作成。底本:「落穂拾い・犬の生活」ちくま文庫、筑摩書房、2013(平成25)年3月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001867/files/58197_71146.html