御する
日本語
編集動詞
編集御する (ぎょする)
- (他動詞, 文章語) 〔人などを〕自分の思い通りに動かす。コントロールする。手玉に取る。
- 1932年、寺田寅彦「俳諧の本質的概論」[1]
- 風雅の心のない武将は人を御することも下手であり、風雅の道を解しない商人はおそらく金もうけも充分でなかったであろうし、朝顔の一鉢を備えない裏長屋には夫婦げんかの回数が多かったであろうと思われる。
- 1938年、坂口安吾「吹雪物語」[2]
- 「あの女は鉄火だからな」と他巳吉は思つた。鉄火な娘は不羈独立不屈の大精神をもつてゐるから実は却つて御し易い。そしてわりあひ金のかからぬものである。
- 1938-41年、三木清「成功について」[3]
- もしひとがいくらかの權力を持つてゐるとしたら、成功主義者ほど御し易いものはないであらう。部下を御してゆく手近かな道は、彼等に立身出世のイデオロギーを吹き込むことである。
- 1932年、寺田寅彦「俳諧の本質的概論」[1]
- (他動詞) 〔馬やその他動物を〕制御する。操る。取り扱う。
- 1924年、佐々岸田國士「文学か戯曲か」[4]
- 巧みな騎手は好んで悍馬を御する例しもあり、エキリブリストは大道を歩むより針金を渡ることを快とするかも知れない。然しながら、その心理を以て直ちに芸術家の――暫くかう呼ばして下さい――心理を計るのは無礼である。
- 1929-31年、佐々木味津三「旗本退屈男」[5]
- 「馬、馬、馬鹿を申すなッ。馬のせいにするとは何ごとじゃ! 己れが乗用致す馬が暴れ出さば、御する者がこれを制止すべきが当り前、第一下民百姓の分際で、武士が通行致す道先に、裸馬など弄ぶとは無礼な奴じゃ! 出い! 出い! 前へ出い! 覚悟があろう! 神妙に前へ出い!」
- 1939年、久生十蘭「墓地展望亭」[6]
- 馬車は、国境に向って、走り出した。馬を御しているのは、敏感そうな顔をした、あの、ヤロスラフ少年だった。
- 1924年、佐々岸田國士「文学か戯曲か」[4]
活用
編集サ行変格活用 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
御 | し せ さ |
し | する | する | すれ | せよ しろ |
意味 | 語形 | 結合 |
---|---|---|
否定 | 御しない | 未然形 + ない |
否定 | 御せず | 未然形 + ず |
自発・受身 可能・尊敬 |
御される | 未然形 + れる |
丁寧 | 御します | 連用形 + ます |
過去・完了・状態 | 御した | 連用形 + た |
言い切り | 御する | 終止形のみ |
名詞化 | 御すること | 連体形 + こと |
仮定条件 | 御すれば | 仮定形 + ば |
命令 | 御せよ 御しろ |
命令形のみ |
註
編集- ↑ 青空文庫、2003年3月6日作成(底本:「寺田寅彦随筆集 第三巻」岩波文庫、岩波書店、1993(平成5)年2月5日第59刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000042/files/2471_9353.html
- ↑ 青空文庫、2013年11月28日作成(底本:「坂口安吾全集 02」筑摩書房、1999(平成11)年4月20日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/43001_51771.html
- ↑ 青空文庫、2008年1月26日作成、2014年2月24日修正(底本:「三木清全集 第一巻」岩波書店、1966(昭和41)年10月17日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000218/files/46845_29569.html
- ↑ 青空文庫、2009年9月5日作成(底本:「岸田國士全集19」岩波書店、1989(平成元)年12月8日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/44315_36699.html
- ↑ 青空文庫、2001年5月18日公開、2014年7月1日修正(底本:「旗本退屈男」春陽文庫、春陽堂書店、1982(昭和57)年7月20日新装第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000111/files/1479_53919.html
- ↑ 青空文庫、2009年10月21日作成(底本:「久生十蘭全集 Ⅵ」三一書房、1974(昭和49)年6月30日第1版第2刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001224/files/46145_37005.html