日本語 編集

動詞 編集

する (しょする)

  1. (他動詞, 文章語) (「○○を書する」または「○○と書する」の形で)書く
    • 1911年、柳田國男「名字の話」[1]
      二字ということは中世では名乗を意味した。武士がある大家の家人となれば、名簿に二字を書してこれを主人に呈し、実名を諱まずに呼んで下さいという儀式を行った。
    • 1915年、森鴎外「魚玄機」[2]
      玄機は起って筆墨を温の前に置いた。温は率然「江辺柳」の三字を書して示した。玄機が暫く考えて占出した詩はこうである。
    • 1916年、森鴎外「壽阿彌の手紙」[3]
      僧は「こちらが谷の音です」と云つて、隣の位牌を指さした。神譽行義居士、明治二十一年十二月二日と書してある。
    • 1918年、長谷川時雨「樋口一葉」[4]
      鑑定局という十畳ばかりの室には、織物が敷詰められてあり、額は二ツ、その一つには静心館と書してあり、書棚、黒棚、ちがい棚などが目苦いまでに並べたててあり[…]
  2. (他動詞, 文章語) (「○○を□□と書する」の形で)表記する。書き表す
    • 1916年、森鴎外「壽阿彌の手紙」[5]
      初めわたくしは壽阿彌の手紙を讀んだ時、所謂「愚姪」の女であるべきことを疑はなかつた。俗にをひを甥と書し、めひを姪と書するからである。
    • 1916年、井上円了「迷信と宗教」[6]
      結婚のときは、ことさら縁起をやかましく申すものである。例えば結納の目録に、昆布を「懇婦」または「子生婦」と書し、柳樽を「屋内喜多留」と書し、鯣を「寿留女」と書し、鯛を「多居」と書するは、みな縁起のよきを祝するのである。
    • 1924年、永井荷風「下谷叢話」[7]
      鈴木氏が家の嫡男元邦、名は甫、字は彦之、号を松塘という。後に姓を鱸と書し枕山湖山と並んで詩名を世に知られたのは即この人である。

活用 編集

書-する 動詞活用表日本語の活用
サ行変格活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形


する する すれ せよ
しろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 書しない 未然形 + ない
否定 書せず 未然形 +
自発・受身
可能・尊敬
書される 未然形 + れる
丁寧 書します 連用形 + ます
過去・完了・状態 書した 連用形 +
言い切り 書する 終止形のみ
名詞化 書すること 連体形 + こと
仮定条件 書すれば 仮定形 +
命令 書せよ
書しろ
命令形のみ

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  1. 青空文庫、2018年7月27日作成(底本:「柳田國男全集20」ちくま文庫、筑摩書房、1990(平成2)年7月31日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001566/files/57903_65468.html
  2. 青空文庫、2001年3月6日公開、2006年4月27日修正(底本:「森鴎外全集5」ちくま文庫、筑摩書房、1995(平成7)年10月24日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/2051_22886.html
  3. 青空文庫、2005年1月26日作成、2011年3月21日修正(底本:「筑摩全集類聚森鴎外全集第四巻」筑摩書房、1972(昭和47)年6月20日初版第2刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/42352_17662.html
  4. 青空文庫、2006年1月21日作成(底本:「新編 近代美人伝(上)」岩波文庫、岩波書店、2001(平成13)年7月9日第5刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000726/files/24442_21417.html
  5. 青空文庫、2005年1月26日作成、2011年3月21日修正(底本:「筑摩全集類聚森鴎外全集第四巻」筑摩書房、1972(昭和47)年6月20日初版第2刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000129/files/42352_17662.html
  6. 青空文庫、2016年3月17日作成(底本:「井上円了 妖怪学全集 第5巻」柏書房、2000(平成12)年5月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001021/files/49374_58731.html
  7. 青空文庫、2021年11月27日作成、2021年12月6日修正(底本:「下谷叢話」岩波文庫、岩波書店、2009(平成21)年7月9日第2刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001341/files/58863_74600.html