期する
日本語
編集動詞
編集期する (きする)
- (他動詞) 成し遂げようと心に決める。心がける。
- 1940年、菊池寛「二千六百年史抄」[1]
- 天正十一年五月、秀吉は諸国から大木巨岩を集め、三十余国からの人夫を使役して、大坂に大規模な築城工事を起し、翌年の八月に殆んど竣工した。金城鉄壁、難攻不落の堅城であり、荘厳壮麗、天下統一の覇業を期する秀吉の理想を象徴した名城でもあつた。
- 1948年、岸田國士「二つの戯曲時代」[2]
- 私は本集を編むに当つて、むろん始めから公平などを期するつもりはなかつたが、以上の理由からだけでもこの一群の作家のうちから、若い世代の「新しさ」がどんな宿命を背負つて、将来の日本演劇を変貌させて行くかを、多少でも示唆し得る若干の例を挙げることにしたのである。
- 1964年、田中角榮、第136回国会参議院[3]
- いずれにしても、新聞をけさ読みながら、答申をいただけば答申尊重ということを国会でもたびたびしゃべっておりますし、また私も言行一致のほうでございますから、これはいただきましたらひとつ十分検討して、なるべく国会でおしかりを受けないようにしなければいかぬということを心に期したわけでございます。
- 2018年The Creative CAT訳、H・ビーム・パイパー「最愛の君」[4]
- 「とにかく、高齢の患者ですから。正確を期せば七十八歳です。」
- 1940年、菊池寛「二千六百年史抄」[1]
- (他動詞, 文章語) 〔良いことを〕期待する。〔良くないことが〕将来起きることを知る。
- 1911年、岡本綺堂「一日一筆」[5]
- 戦場の混雑は勿論これ以上である。が、その混雑の間にも軍隊には一定の規律がある。人は総て死を期している。
- 1943年、谷崎潤一郎「細雪」[6]
- 後に妙子はこの時のいきさつを櫛田医師に語ったが、櫛田医師の説では、耳の手術から黴菌が這入って四肢を侵すと云うようなことは、たとい一流の専門医が注意に注意して手がけても往々あり得ることで、医師も神様でない以上、絶無を期する訳には行かない
- 1946年、豊島与志雄「白藤」[7]
- だが、戦局は日増しに不利で、戦線は次第に本土近くへ押し返されて、心ある者には既に敗色が感ぜられていました。国外へ出征すれば生還を期し難い事態でありました。
- 1911年、岡本綺堂「一日一筆」[5]
- (他動詞, 文章語) 〔行う時刻を〕決める。期日とする。
活用
編集サ行変格活用 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
期 | し せ さ |
し | する | する | すれ | せよ しろ |
意味 | 語形 | 結合 |
---|---|---|
否定 | 期しない | 未然形 + ない |
否定 | 期せず | 未然形 + ず |
自発・受身 可能・尊敬 |
期される | 未然形 + れる |
丁寧 | 期します | 連用形 + ます |
過去・完了・状態 | 期した | 連用形 + た |
言い切り | 期する | 終止形のみ |
名詞化 | 期すること | 連体形 + こと |
仮定条件 | 期すれば | 仮定形 + ば |
命令 | 期せよ 期しろ |
命令形のみ |
連語
編集註
編集- ↑ 青空文庫、2013年1月2日作成(底本:「菊池寛全集 第十八巻」高松市菊池寛記念館、文藝春秋、1995(平成7)年4月15日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000083/files/46289_49775.html
- ↑ 青空文庫、2010年7月1日作成、2011年5月30日修正(底本:「岸田國士全集27」岩波書店、1991(平成3)年12月9日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001154/files/44745_39633.html
- ↑ 「第47回国会 衆議院 大蔵委員会 第1号 昭和39年12月12日」国会会議録検索システム https://kokkai.ndl.go.jp/txt/104704629X00119641212/61 2022年7月23日参照。
- ↑ 青空文庫、2019年3月12日作成(原書:"Dearest" by H. Beam Piper、1951年)https://www.aozora.gr.jp/cards/002036/files/59409_67528.html
- ↑ 青空文庫、2008年11月29日作成(底本:「岡本綺堂随筆集」岩波文庫、岩波書店、2008(平成20)年5月23日第4刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000082/files/49561_33613.html
- ↑ 青空文庫、2020年6月27日作成(底本:「細雪(中)」新潮文庫、新潮社、2016(平成28)年1月25日101刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/57416_71300.html
- ↑ 青空文庫、2008年1月16日作成(底本:「豊島与志雄著作集 第四巻(小説Ⅳ)」未来社、1965(昭和40)年6月25日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001383/files/57416_71300.html
- ↑ 青空文庫、2010年5月27日作成、2016年10月16日修正(底本:「戸坂潤全集 第二巻」勁草書房、1970(昭和45)年9月10日第7刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000281/files/3596_39403.html
- ↑ 青空文庫、2015年3月8日作成(底本:「豊田喜一郎文書集成」名古屋大学出版会、1999(平成11)年4月15日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001362/files/53679_56520.html
- ↑ 青空文庫、2006年7月3日作成(底本:「菊池寛全集 第十九巻」高松市菊池寛記念館、文藝春秋、1995(平成7)年6月15日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001362/files/53679_56520.html