熟する (じゅくする)
- (自動詞) (果実などが)熟れる。
- 1901年、正岡子規「くだもの」[1]
- くだものには大概美しい皮がかぶさっておる。覆盆子、桑の実などはやや違う。その皮の色は多くは始め青い色であって熟するほど黄色かまたは赤色になる。
- 1923年、宮沢賢治「やまなし」[2]
- 『どうだ、やっぱりやまなしだよ、よく熟している、いい匂いだろう。』『おいしそうだね、お父さん』
- (自動詞) (物事が)充分に効果を発揮する状態になる。
- 1936年、海野十三「鍵から抜け出した女」[3]
- いよいよ、時は熟した。僕は煎餅蒲団の間から滑りだすと、大胆に行動を開始した。
- 1945年、伊丹万作「一つの世界」[4]
- 現在までのところ共産主義に対抗するだけの力を持った思想は生れていないし、これから生れるとしてもそれが成長し熟するまでにはすくなくとも百年くらいかかるだろうから、一度統一された世界ではそうちょいちょい戦争は起らないものと考えてよい。
- (自動詞) (「~に熟する」の形で)~に習熟する。~に熟練する。
- 1909年、内田魯庵「二葉亭四迷の一生」[5]
- が、余り原文に忠実であり過ぎたため、外国文章の句法辞法に熟する人でなくてはとても理解されない難かしいものとなった。
- 1949年、平野萬里「晶子鑑賞」[6]
- 誰かあれ、欧洲語に熟した人があつたら試みにこの歌を訳して見たらと私は思ふ。或は既に訳されて居るかも知れない。
各活用形の基礎的な結合例
意味 | 語形 | 結合 |
否定 |
熟しない |
未然形 + ない |
否定 |
熟せず |
未然形 + ず |
自発・受身 可能・尊敬 |
熟される |
未然形 + れる |
丁寧 |
熟します |
連用形 + ます |
過去・完了・状態 |
熟した |
連用形 + た |
言い切り |
熟する |
終止形のみ |
名詞化 |
熟すること |
連体形 + こと |
仮定条件 |
熟すれば |
仮定形 + ば |
命令 |
熟せよ 熟しろ |
命令形のみ |