日本語

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動詞

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じる (げんじる)

  1. (他動詞, 文章語) 〔ある光景場面を〕生み出す現出させる。出現させる。
    • 1927年、芥川龍之介「三つのなぜ」[1]
      すると突然幻は誰も見たことのない獣を一匹、入り日の光の中に現じ出した。獣は獅子に似て翼を拡げ、頭を二つ具えていた。
    • 1942年、吉川英治「上杉謙信」[2]
      墨のような秋の夜が、また虫の音と星ばかりな天地を現じた。陣々から霧のような炊事のけむりが立ち昇ってから程なく武田方の旌旗は徐々うごき出した。
  2. (自動詞, 文章語) 現れる現出する。出現する。
    • 1926年、佐々木喜善「東奥異聞」[3]
      どうだ汝にそれができるかといって、みずからかなたの尾嶺の上に向かって気を吐けば忽然としてシカ、サル、イノシシ、オオカミ、ウサギなどその他もろもろの獣類が現じて一生懸命に走る。
    • 1941年、中谷宇吉郎「壁画摸写」[4]
      寒い札幌へ帰って来て、大和の秋を憶いみる毎に、千年の闇から煌々と現じ出た壁画の姿が先ず心に浮ぶのである。

活用

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げん-じる 動詞活用表日本語の活用
ザ行上一段活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
げん じる じる じれ じよ
じろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 げんじない 未然形 + ない
意志・勧誘 げんじよう 未然形 + よう
丁寧 げんじます 連用形 + ます
過去・完了・状態 げんじた 連用形 +
言い切り げんじる 終止形のみ
名詞化 げんじること 連体形 + こと
仮定条件 げんじれば 仮定形 +
命令 げんじよ
げんじろ
命令形のみ
  1. 青空文庫、2004年1月5日公開、2016年2月25日修正(底本:「昭和文学全集 第1巻」小学館、1987(昭和62)年5月1日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/1124_14252.html
  2. 青空文庫、2014年3月7日作成(底本:「上杉謙信」吉川英治歴史時代文庫、講談社、1996(平成8)年12月12日第15刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001562/files/56461_53172.html
  3. 青空文庫、2014年5月22日作成(底本:「世界教養全集 21」平凡社、1963(昭和38)年12月20日3版)https://www.aozora.gr.jp/cards/000263/files/53817_53604.html
  4. 青空文庫、2021年4月27日作成(底本:「中谷宇吉郎集 第三巻」岩波書店、2000(平成12)年12月5日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/57329_73208.html