日本語 編集

動詞 編集

する (さんする)

  1. (自動詞, 文章語) 賛成する。同意する。
    • 1924年、豊島与志雄「偶像に就ての雑感」[1]
      然しながら私は必ずしもトルストイの到着した結論に賛するものではない。唯私が茲に言いたいことは、その出立点に在る。
    • 1927年、芥川龍之介「文芸的な、余りに文芸的な」[2]
      唯「日本の小説に最も欠けてゐるところは、此の構成する力、いろいろ入り組んだ筋を幾何学的に組み立てる才能にある」かどうか、その点は僕は無造作に谷崎氏の議論に賛することは出来ない。我々日本人は「源氏物語」の昔からかう云ふ才能を持ち合せてゐる。
  2. (他動詞, 文章語)画賛を〕記す
    • 1902年、正岡子規「病牀六尺」[3]
      も一つ例を挙げていふならば団扇の画に蛍の句を書くとか、蛍の画に団扇の句を書くとか、もしまた団扇と蛍と共に画いてある画ならば、涼しさやとか夕涼みとかいふやうな句を賛する
    • 1950年、中谷宇吉郎「湯川秀樹さんのこと」[4]
      スミ夫人も子供の頃から画を習っていて、立派に雅名まであることを、その時初めて知った。私が秘蔵の嘉慶墨で、コスモスを描き、スミ夫人が赤とんぼをあしらい、湯川さんがそれに歓迎の俳句を賛してくれた。
  3. (他動詞, 文章語) 賞賛する。
    • 1892年、徳富蘇峰「吉田松陰」[5]
      「真個関西志士の魁、英風我が邦を鼓舞し来れり」。これ彼が高弟高杉晋作の彼を賛するの辞、言い尽して余蘊なし。
    • 1939-1943年、吉川英治「三国志」[6]
      「これは確かに隠し詞に違いございません。黄絹と申すは即ち色の糸、文字にしますれば『絶』の字にあたります。[……]これを連ねて『絶妙好辞』これは邯鄲淳の文を賛して、絶れて妙なる好き辞と褒めたものと存じますが」

活用 編集

賛-する 動詞活用表日本語の活用
サ行変格活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形


する する すれ せよ
しろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 賛しない 未然形 + ない
否定 賛せず 未然形 +
自発・受身
可能・尊敬
賛される 未然形 + れる
丁寧 賛します 連用形 + ます
過去・完了・状態 賛した 連用形 +
言い切り 賛する 終止形のみ
名詞化 賛すること 連体形 + こと
仮定条件 賛すれば 仮定形 +
命令 賛せよ
賛しろ
命令形のみ

編集

  1. 青空文庫、2005年12月7日作成(底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社、1967(昭和42)年11月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/42488_21110.html
  2. 青空文庫、1999年2月2日公開、2004年3月16日修正(底本:「現代日本文学大系 43 芥川龍之介集」筑摩書房、1968(昭和43)年8月25日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/26_15271.html
  3. 青空文庫、2010年12月18日作成(底本:「病牀六尺」岩波書店、2004(平成16)年1月5日第57刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000305/files/43537_41508.html
  4. 青空文庫、2016年6月10日作成(底本:「中谷宇吉郎集 第六巻」岩波書店、2001(平成13)年3月5日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/57292_59628.html
  5. 青空文庫、2017年7月18日作成(底本:「吉田松陰」岩波文庫、岩波書店、1988(昭和63)年7月5日第11刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001369/files/51204_62108.html
  6. 青空文庫、2013年7月11日作成、2014年7月26日修正(底本:「三国志(六)」吉川英治歴史時代文庫、講談社、2008(平成20)年2月1日第47刷発行。「三国志(七)」吉川英治歴史時代文庫、講談社、2008(平成20)年12月1日第52刷発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001562/files/52417_51068.html