日本語 編集

異表記・別形 編集

名詞 編集

(でんしょく)

  1. 本来の電気回路から電流が漏れて、意図していない箇所を電流が流れるとき、その箇所で電解によって腐食が起こる現象。迷走電流腐食に同じ。
    • 2004年、国土交通省「少数台数のリコール届出の公表について」[1]
      エンジンアースの取り方が不適切なため、アース電流がエンジンのクランク軸と軸受けメタルを通過して流れ、摺動面に電食を発生させるものがある。そのため、そのまま使用を続けると、電食が発生してメタルが焼き付きエンジンが停止し、再始動できなくなるおそれがある。
    • 2019年、経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」[2]
      排流施設は、他の金属製地中管路及び帰線用レールに対する電食作用による障害を著しく増加するおそれがないように施設すること。
  2. 2つの異なる種類の金属が直接接触するときに、片方の金属で腐食がいちじるしく進む現象。異種金属接触腐食に同じ。ただし、この語義での用法は専門的には間違いとされている(#用法参照)。
    • 2009年、中小企業庁「戦略的基盤技術高度化支援事業研究開発成果事例集」[3]
      マグネシウム合金部材の締結には、電食を防ぐため、被締結部材と同種のマグネシウム合金性のねじが不可欠
    • 2019年、経済産業省「電気設備の技術基準の解釈の解説」[4]
      第四号は、異種金属の接触腐食(電食)の防止に関して規定したものである。例えばアルミと銅は電解質溶液中においてイオン化による電位差が生じるため、アルミと銅とが接触し、その接触部分に水分などの電解質溶液が介在すると、アルミが腐食される。
  3. 軸受の内輪と外輪の潤滑油膜で絶縁されていた電気が、油膜を破って通電するときに放電が起き、軸受の転動面が損傷する現象。
    • 1985年、辻第一、第103回国会衆議院[5]
      それから、入場時に軸受けに電食が発生しているものは取りかえるというふうに言っているのですが、入場時というのはいつのことなのか。

用法 編集

専門的には、語義1(迷走電流腐食)の言い換えとして「電食」という語を使うことは認められているが[6]、語義2(異種金属接触腐食)の意味で「電食」を使うのは望ましくないとされている[7]。異種金属接触腐食は電食ではない、と明確に記述する専門書[8]や、異種金属接触腐食の意味で電食と呼ぶ分野があることを認めつつもこのような意味での用法は誤りと解説する入門書[9]もある。

また、電食という語がさまざまな意味で使われて腐食現象の誤解や混乱を招いていることから、電食という語自体の使用を推奨しない専門家もいる[10]

動詞 編集

-する(でんしょく-する)

活用 編集

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  1. 『国土交通省自動車交通局プレスリリース 少数台数のリコール届出の公表について (平成16年10月分)』(国土交通省ホームページ)政府標準利用規約(第2.0版)公開 https://www.mlit.go.jp/jidosha/recall/recall04/11/recall11-043.pdf 2020年11月14日参照。
  2. 産業保安グループ電力安全課 『平成30年10月1日改正 電気設備の技術基準の解釈』(経済産業省ホームページ)政府標準利用規約(第2.0版)公開 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/oshirase/2018/09/300928-4.pdf 2020年11月14日参照。
  3. 中小企業庁 経営支援部 技術・経営革新課『戦略的基盤技術高度化支援事業研究開発成果事例集 平成19年度~21年度研究開発プロジェクト』p. 82(経済産業省ホームページ)政府標準利用規約(第2.0版)公開 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/files/dengikaishakukaisetsu.pdf 2020年11月14日参照。
  4. 産業保安グループ電力安全課 『平成30年10月1日改正 電気設備の技術基準の解釈の解説』p. 22(経済産業省ホームページ)政府標準利用規約(第2.0版)公開 https://www.meti.go.jp/policy/safety_security/industrial_safety/sangyo/electric/files/dengikaishakukaisetsu.pdf 2020年11月14日参照。
  5. 「第103回国会 衆議院 運輸委員会 第2号 昭和60年11月26日」国会会議録検索システム https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=110303830X00219851126&spkNum=253&single 2020年11月14日参照。
  6. 腐食防食協会(編)、2000、『腐食・防食ハンドブック』、丸善、ISBN 4-621-04648-9 p. 75
  7. 川本 輝明、1984、「異種金属接触腐食」、『防食技術』33巻8号、腐食防食協会、doi:10.3323/jcorr1974.33.8_478 p. 478
  8. 電気学会・電食防止研究委員会(編)、2011、『電食防止・電気防食ハンドブック』、オーム社 ISBN 978-4-274-20973-4 p. 3
  9. 藤井 哲雄(監修)、2017、『錆・腐食・防食のすべてがわかる事典』初版、ナツメ社 ISBN 978-4-8163-6243-9 pp. 92, 120
  10. 松島 巖、1980、「電食」、『防食技術』29巻5号、腐食防食協会、doi:10.3323/jcorr1974.29.5_252 p. 252