都合 (つごう)
- 何かをする際に、そのことの実現が可能となるために整うべき状況や状態。具合。塩梅。
- いろいろ御相談もありますので、二十五日の午後一時から鉄塔書院で御会いいたしたいと存じますが御都合如何でございますか? (野呂栄太郎 『平野義太郎宛書簡 一九三二年五月二十三日』)
- わたしのその家に入つたのは初めてゞしたが、わたしの家とは舊(ふる)くからの知合で、この家の人でわたしを知つてゐるのが二三人ありました。で、たいへん都合よく、十一歳の少年は一人前の旅客として、ある一室に通されました。(若山牧水 『金比羅參り』)
- 何かをする際に、そのことの実現が不可能な状況や事情。また自身の意思や希望と無関係にそのようにせざるを得ない事情。
- 「私は今日は都合があって、御同席は出来ませんが万事よろしく……」といって竹内氏は帰られました。(高村光雲 『幕末維新懐古談 学校へ奉職した前後のはなし』)
- なにしろ、父の勤めの都合で、香港や廣東で幼時をすごし、それからぽんと東京のミッションスクールの寄宿舍に入れられてしまつてゐたのだから……(堀辰雄 『わぎもこ』)
- (一般的に)状況。事情。
- 叔父は事業家でいろいろな事に手を出しては失敗する、云わば山気の多い男であった。宗助が東京にいる時分も、よく宗助の父を説きつけては、旨い事を云って金を引き出したものである。宗助の父にも慾があったかも知れないが、この伝で叔父の事業に注ぎ込んだ金高はけっして少ないものではなかった。父の亡くなったこの際にも、叔父の都合は元と余り変っていない様子であったが、生前の義理もあるし、またこう云う男の常として、いざと云う場合には比較的融通のつくものと見えて、叔父は快よく整理を引き受けてくれた。(夏目漱石『門』)
- 自己にとっての一方的な利便。身勝手な希望に合うこと。
- 元来作者は自分自身の中に居る「坊ちゃん」「赤シャツ」「のだ」「狸」「山あらし」を気任せに取出して紙面の舞台で踊らせ歌わせる。見物人の読者はそれを見て各自の中に居る「坊ちゃん」「赤シャツ」エトセトラを共鳴させる。気楽なたちの人はそのうちで自分に都合のいい気持のいいのだけを自由に振動させ、都合のわるいのはそっとダンプしておく。(寺田寅彦 『スパーク』)
- すべての易者と星占家(家相家や、人相見や、八卦師や)は、かうした彼等の所謂亡者どもを濟度するため、矛盾にも此處で前説を豹變し、逆に今度は、意志の自由が運命を支配すること、自覺と心がけとによつて、何人も意識的に人相を變へ、惡しき手相を善き手相にし、自由に運命を支配し得ることを辯解する。(略)げに易者の哲理ほど、都合よく詭辯されたものはない。(萩原朔太郎 『易者の哲理』)
- 都合のいい人(1. 自分のことばかりで人の事情を考えない勝手な人。2. 勝手気ままに利用できる相手)
- (東京式) つごー [tsùgóó] (平板型 – [0])
- IPA(?): [t͡sɨᵝɡo̞ː]
都合する (つごうする)
- 何かの用を満たす、ある物、特に金銭を集める。工面する、調達する。
- 君が大切にしている水晶さまにお願いして、缶詰を二箱ぐらいなんとか都合してもらえまいか。(海野十三 『火星探険』)
- せつ子はこれまでに青木から八十万円ほど出させている。自分で二百万都合するから、青木には三百万都合して、と頼んだ。五百万耳がそろわなくとも仕事に着手できるが、八十万じゃ、着手どころか、事務室もかりられない。(坂口安吾 『街はふるさと』 )
- 限りあるものをやり繰りする。
- 私たちはニルの奥地へ行く前と、帰ってからと、毎日時間を都合してカイロの町と郊外を見て歩いた。(野上豊一郎『七重文化の都市』)
- 私は須山家から電話がかかると、他の運転手の番であっても成るべく都合して、自分が行くことにしてしまいました。(浜尾四郎 『死者の権利』)
活用と結合例
各活用形の基礎的な結合例
意味 |
語形 |
結合
|
否定 |
都合しない |
未然形 + ない
|
否定(古風) |
都合せず |
未然形 + ず
|
自発・受身 可能・尊敬 |
都合される |
未然形 + れる
|
丁寧 |
都合します |
連用形 + ます
|
過去・完了・状態 |
都合した |
連用形 + た
|
言い切り |
都合する |
終止形のみ
|
名詞化 |
都合すること |
連体形 + こと
|
仮定条件 |
都合すれば |
仮定形 + ば
|
命令 |
都合しろ 都合せよ |
命令形のみ
|
- (東京式) つごー [tsùgóó] (平板型 – [0])
- IPA(?): [t͡sɨᵝɡo̞ː]
都合 (つごう)
- 合計(して)。全部(で)。
- 上野より水戸線に由りて、土浦まで汽車にて二時間半、土浦より北条まで四里、馬車にて二時間、北条より筑波町まで一里、徒歩して一時間、都合六時間以内の行程、これ東京よりの順路なるが、上野発が午後二時二十分なれば、途中にて日が暮るべし。(大町桂月 『秋の筑波山』)
- (東京式) つごー [tsúꜜgòò] (頭高型 – [1])
- IPA(?): [t͡sɨᵝɡo̞ː]