博する
日本語
編集動詞
編集博する (はくする)
- (他動詞) 〔主に抽象名詞で良いものを目的語にして〕獲得する。得る。
- 1907年、新渡戸稲造「教育の目的」[1]
- 日露戦争に日本の海軍が大勝利を博し、東郷大将が大名誉を得られた。明治の歴史にこれほどエライ人はないということをば、大工の子供も聞いている。
- 1925年、桑原隲藏「支那猥談」[2]
- しばらく外交方面を見渡しても、支那の政治家は今もその傳統的の以レ夷制レ夷政策を改めぬ。この政策も稀に用ふると小利を博することもあるが、元來が他力本願で之を常用すると大害を招く。
- 1926年、甲賀三郎「ニッケルの文鎮」[3]
- そこでそれを逆用して、古田の事をいい立てて、検事の信用を博すると共に、古田を刑務所に送ろうとしたのです。無論留守中に彼の宅から原稿を盗み出すつもりです。
- 1996年、日野市朗、第136回国会衆議院[4]
- 我が国のこの国際ボランティア貯金は開発途上地域の援助に非常に役に立っておりまして、被援助国からも好評を博しております。
- 1907年、新渡戸稲造「教育の目的」[1]
- (他動詞) 〔評判などを〕広める。行き渡らせる。
- 1935年、徳田秋声「仮装人物」[5]
- そのころ大戦後の疲弊から、西欧の一流芸術家が、まだしも経済状況の比較的良かった日本を見舞って、ちょうどレコオド音楽の普及しつつあった青年のあいだに、不思議な喝采を博していた。
- 1936年、夢野久作「少女地獄」[6]
- 「ええ。それがね。あの人は地道に行きたい行きたい。みんなに信用されていたいいたいと、思い詰めているのがあの娘(ひと)の虚栄なんですからね。そのために虚構(うそ)を吐(つ)くんですよ」/「それが第一おかしいじゃないか。第一、そんなにまでしてこちらの信用を博する必要が何処に在るんだい。看護婦としての手腕はチャント認められているんだし、実家(うち)が裕福だろうが貧乏だろうが看護婦としての資格や信用には無関係だろう。それくらいの事がわからない馬鹿じゃ、姫草はないと思うんだが」
- 1937年、戸坂潤「思想動員論」[7]
- さて併し、こうした半官憲的文化動員・思想動員が、その作為的なポーズに拘らず、自然な文化的信用を民衆の間に博するかどうかは、実際極めて疑問と云う他ない。
- 1935年、徳田秋声「仮装人物」[5]
活用
編集サ行変格活用 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
博 | し せ さ |
し | する | する | すれ | せよ しろ |
意味 | 語形 | 結合 |
---|---|---|
否定 | 博しない | 未然形 + ない |
否定 | 博せず | 未然形 + ず |
自発・受身 可能・尊敬 |
博される | 未然形 + れる |
丁寧 | 博します | 連用形 + ます |
過去・完了・状態 | 博した | 連用形 + た |
言い切り | 博する | 終止形のみ |
名詞化 | 博すること | 連体形 + こと |
仮定条件 | 博すれば | 仮定形 + ば |
命令 | 博せよ 博しろ |
命令形のみ |
註
編集- ↑ 青空文庫、2010年3月12日作成、2010年11月1日修正(底本:「本格推理展覧会 第三巻 凶器の蒐集家」青樹社文庫、青樹社、2007(平成19)年5月16日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000718/files/50670_38556.html
- ↑ 青空文庫、2003年4月1日作成、2004年2月21日修正(底本:「桑原隲藏全集 第一卷 東洋史説苑」岩波書店、1968(昭和43)年2月13日初版)https://www.aozora.gr.jp/cards/000372/files/7941_9677.html
- ↑ 青空文庫、2000年11月14日公開、2005年12月7日修正(底本:「本格推理展覧会 第三巻 凶器の蒐集家」青樹社文庫、青樹社、1996(平成8)年3月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000260/files/1428_20708.html
- ↑ 「第136回国会 衆議院 逓信委員会 第4号 平成8年3月14日」国会会議録検索システム https://kokkai.ndl.go.jp/txt/113604816X00419960314/13 2022年8月18日参照。
- ↑ 青空文庫、2001年5月17日公開、2012年1月26日修正(底本:「現代日本文学館8 徳田秋声」文藝春秋、1969(昭和44)年7月1日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000023/files/1699_46893.html
- ↑ 青空文庫、2000年1月12日公開、2011年1月21日修正(底本:「少女地獄」角川文庫、角川書店、1990(平成2)年2月20日26版発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000096/files/935_23282.html
- ↑ 青空文庫、2012年9月24日作成(底本:「戸坂潤全集 第五巻」勁草書房、1968(昭和43)年12月10日第3刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000281/files/55349_48976.html