生じる (しょうじる)
- (自動詞) 発生する。生まれる。出来る。
- 1916年、久米正雄「競漕」[1]
- 毎年春季に開かれる大学の競漕会がもう一月と差し迫った時になって、文科の短艇部選手に急な欠員が生じた。五番を漕いでいた浅沼が他の選手と衝突して止めてしまったのである。
- 1927年、岸田國士「端役」[2]
- 私たちは、また、人生の過程に於て、一つの端役を受持つことで満足しよう。あらゆる世相の波紋は、あらゆる人間の「役不足」から生じてゐる。
- 1941年、三木清「読書遍歴」[3]
- このような動きに対して私は無関心ではなかったが、その中に入ってゆく気は生じなかった。また一灯園や「新しい村」の運動にも十分に興味がもてなかった。
- (他動詞) 発生させる。生み出す。
- 1915年、寺田寅彦「物質とエネルギー」[4]
- 光は熱を生じ化学作用を起しまた圧力を及ぼして機械的の仕事をする。音も鼓膜を動かして仕事をし、また熱にも変ずる。
- 1926年、芥川龍之介「追憶」[5]
- 僕は時々狭い庭を歩き、父の真似をして雑草を抜いた。実際庭は水場だけにいろいろの草を生じやすかった。
- 1941年、宮本百合子「女性の歴史の七十四年」[6]
- 日本の歴史に縫いあらわされている婦人のこのような社会力の弱さは、今日の新しい日本の進み出しのあらゆる場面で、種々様々の困難を生じていると思う。
- (他動詞) (「人を主語にして)有するようになる。有し始める。
- 1927年、芥川龍之介「貝殼」[7]
- 彼女は彼に反感を生じ、彼以外の――仮に4と呼ぶとすれば、4と云ふ男に馴染み出した。彼は又急に嫉妬を感じ、彼女を4から奪はうとした。
- 1931年、坂口安吾「木枯の酒倉から」[8]
- 俺の目はいみじくも光り輝き、額は痩せくたびれて、頭は唸りを生じ、俺は――ほがらかに気狂いになりそうな気がするのだ。俺の唇は酒を一滴も呑まぬのに呂律も廻らなくなって、ワハ、オモチロイヨ、などと言うのだ。
- 1934年、寺田寅彦「天災と国防」[9]
- 文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた。そうして、重力に逆らい、風圧水力に抗するようないろいろの造営物を作った。
各活用形の基礎的な結合例
意味 | 語形 | 結合 |
否定 |
生じない |
未然形 + ない |
意志・勧誘 |
生じよう |
未然形 + よう |
丁寧 |
生じます |
連用形 + ます |
過去・完了・状態 |
生じた |
連用形 + た |
言い切り |
生じる |
終止形のみ |
名詞化 |
生じること |
連体形 + こと |
仮定条件 |
生じれば |
仮定形 + ば |
命令 |
生じよ 生じろ |
命令形のみ |