軽薄 (けいはく)
- 物が軽く薄いこと。
- 今の錦紗のやや軽薄めいた技巧的感触や西陣お召の厳粛性のやうな感じとは全然ちがふもつと、ち、り、め、ん、といふなまめかしさ、いとしさ、やるせなさ、優しさの含んだ純粋絹をねりにねつてしなとこくとをつけた布地でした。(岡本かの子 『縮緬のこころ』)
- 軽々しく、価値がないこと。
- 近頃出来の頭の小さい軽薄な地蔵に比すれば、頭が余程大きく、曲眉豊頬ゆったりとした柔和の相好、少しも近代生活の齷齪したさまがなく、大分ふるいものと見えて日苔が真白について居る。(徳冨蘆花 『地蔵尊』)
- 心が上滑りして、誠実な様子が見えないこと。
- 仙台では、品格ある家庭に於ては、江戸弁を用うることを決してしない。鈍重にして威儀ある、純然たる仙台弁を用うることを貴しとしているが、もちろん、軽快なる江戸弁は、用いようとしても用いられないにきまっているが、その模倣の軽薄を避けることが土人の品格となっている。(中里介山 『大菩薩峠 白雲の巻』)
- そのことに対する私どもの感謝の念は限り無いものでありますが、それが限りないものであればあるだけ、それを此処で言葉の上だけで述べるような軽薄さをしたくありません。(三好十郎 『猿の図』)
- 私は、或る「老大家」の小説を読んでみた。何のことはない、周囲のごひいきのお好みに応じた表情を、キッとなって構えて見せているだけであった。軽薄も極まっているのであるが、馬鹿者は、それを「立派」と言い、「潔癖」と言い、ひどい者は、「貴族的」なぞと言ってあがめているようである。(太宰治 『如是我聞』)
- 追従、おせじ。
- だが然し姉御、内の親方には眼玉を貰つても私は嬉しいとおもつて居ます、なにも姉御の前だからとて軽薄を云ふではありませぬが、真実に内の親方は茶袋よりもありがたいとおもつて居ます、(幸田露伴 『五重塔』)
- しかるに、人によると、悪しきことをもほめる者を軽薄者として怒るのがある。これはばかである。一家中に、主君に直言するごとき家来は、五人か三人くらいしかないであろう。大部分は軽薄をいうのが通例である。それを心得ていないで怒るというのは、ばかというほかはない。(和辻哲郎 『埋もれた日本 ――キリシタン渡来文化』; 前者は語義3の用法)
語義2
語義3
語義3
活用と結合例
各活用形の基礎的な結合例
意味 |
語形 |
結合
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推量・意志 |
軽薄だろう |
未然形 + う
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過去・完了 |
軽薄だった |
連用形 + た
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否定形 |
軽薄でない |
連用形 + ない
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自動詞化 |
軽薄になる |
連用形 + なる
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言い切り |
軽薄だ |
終止形のみ
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名詞化 |
軽薄なこと |
連体形 + こと
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仮定条件 |
軽薄ならば |
仮定形 + ば
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様態 |
軽薄そうだ |
語幹 + そうだ
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