ふりむく【振り向く・振向く】
- (自動詞) 上半身または首をひねって視野を後ろまたは横に向ける。
- うしろの方で人の声がした。ふりむくと、刀をさしたさむらいが、夏木立の青い日影を浴びて立っていた。(太宰治「地球図」)〔1935年〕[1]
- すぐその方向に振向いた時、私は、今しも白塗の欄干を越えて海の上へと躍った島民少年の後姿を見た。(中島敦「環礁」)〔1942年〕[2]
- (自動詞) 上半身または首をひねって視野を後ろまたは横に向け、対象物や別の方角を見る。
- と、その時どうしたはずみか、お嬢さんはこちらを振向いた。その顔は一めん火傷の跡で灰色なのだ。(原民喜「火の子供」)〔1949年〕[3]
- みんながどっと笑った。大河は、しかし、そのほうをふりむこうともしなかった。(下村湖人「次郎物語」)〔1954年〕[4]
- 立ちどまる。信濃は尊氏を振向いた。(吉川英治「私本太平記」)〔1958–1961年〕[5]
- (自動詞) 興味や好意を抱く。
- 誰にでもペロペロなめて親愛の情をヒレキするが、よその犬には振り向くこともない。(坂口安吾「安吾の新日本地理」)〔1951年〕[6]
- 詩は亡びる。と菊池寛氏が言ったので、詩人達の間に騒がれた。小学生が言ったのなら、振り向くものもなかったろうに、菊池寛氏が言ったというので騒がざるを得なかったわけなのだ。(山之口貘「つまり詩は亡びる」)〔1937年〕[7]
- しかし、ちょっと工夫をすることによって、これまで伝統工芸に興味がなかった人や若い世代を振り向かせたり、あるいは、これまで以上に付加価値や魅力を高めることによって売り上げ増に結びつけることもできるわけであります。(佐々木紀、第186回国会衆議院予算委員会第七分科会)〔2014年〕[8]
活用と結合例
各活用形の基礎的な結合例
意味 | 語形 | 結合 |
否定 | ふりむかない | 未然形 + ない |
意志・勧誘 | ふりむこう | 未然形音便 + う |
丁寧 | ふりむきます | 連用形 + ます |
過去・完了・状態 | ふりむいた | 連用形音便 + た |
言い切り | ふりむく | 終止形のみ |
名詞化 | ふりむくこと | 連体形 + こと |
仮定条件 | ふりむけば | 仮定形 + ば |
命令 | ふりむけ | 命令形のみ |