接する
日本語
編集動詞
編集接する (せっする)
- (自動詞) 〔人に〕会う。応対する。
- (自動詞) (「~に接する」の形で)〔物事や出来事を〕見たり、聞いたり、読んだり、感じたりして知る。知覚する。
- (自動詞) 〔物体が〕隙間なく隣り合う。触れ合う。
- (自動詞) 〔ある場所が他の場所に対して〕目立った空間を挟まずに、すぐ近くに存在する。
- 1912年、ハンス・ランド、森鴎外訳「冬の王」[10]
- 下宿には大きい庭があって、それがすぐに海に接している。カツテガツトの波が岸を打っている。
- 1939年、山本周五郎「水中の怪人」[11]
- 水圧工業会社の社長、鹿島銀造の家は京橋明石町の工場に接して建てられている。――二人が帰ったとき、朝の早い社長はもう工場附属の研究所へ出ていたので、文吾は良子を寝るようにすすめておいて一人で研究所の方へいった。
- 1942年、佐藤垢石「桑の虫と小伜」[12]
- 私の故郷の家の、うしろの方に森に囲まれた古沼がある。西側は、欅や椋、榎などの大樹が生い茂り、北側は、濃い竹林が掩いかぶさっている。東側は厚い桑園に続いていて、南側だけが、わずかに野道に接しているが、一人で釣っているには、薄気味が悪過ぎる。
- 1912年、ハンス・ランド、森鴎外訳「冬の王」[10]
- (他動詞) 近づける。
- 1935-37年、吉川英治「新編忠臣蔵」[13]
- 吉良家へ、挨拶に行く事について、安井と藤井の二人は、ややしばらく、家老部屋を閉じこめていた。ややしばらく、中で、膝を接して永々と、熟議をしていたが、やがて、そこを出て来ると、[…]
- 1963年、梅崎春生「狂い凧」[14]
- 栄介は幸太郎と体を接して乗るのは、イヤなのだろう。自分で扉をあけて、老人の手助けするというやり方ではなく、押し込むようにして、乗車させた。
- 1994年、富田倫生「パソコン創世記」[15]
- 研鑽学校で過ごす二週間の半分は、参画した人々と肩を並べての労働であり、期間中の食事は彼らと席を接して食堂でとる。いわばこの二週間は、革命への体験的参加といえようか。
- 1935-37年、吉川英治「新編忠臣蔵」[13]
- (自動詞, 幾何学) 〔直線を含む曲線が他の曲線と〕ともにある1点を通り、なおかつその1点で同じ接線を共有する。接点を持つ。
- 2014年、桂ゆかり「熱電研究のための第一原理計算入門」[16]
- 一般に、E-k 曲線が放物線に合わない場合は、E = EF において E-k 曲線に接する放物線が、その自由電子近似に対応する。
- 2014年、桂ゆかり「熱電研究のための第一原理計算入門」[16]
活用
編集サ行変格活用 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|
語幹 | 未然形 | 連用形 | 終止形 | 連体形 | 仮定形 | 命令形 |
接 | し せ さ |
し | する | する | すれ | せよ しろ |
意味 | 語形 | 結合 |
---|---|---|
否定 | 接しない | 未然形 + ない |
否定 | 接せず | 未然形 + ず |
自発・受身 可能・尊敬 |
接される | 未然形 + れる |
丁寧 | 接します | 連用形 + ます |
過去・完了・状態 | 接した | 連用形 + た |
言い切り | 接する | 終止形のみ |
名詞化 | 接すること | 連体形 + こと |
仮定条件 | 接すれば | 仮定形 + ば |
命令 | 接せよ 接しろ |
命令形のみ |
慣用句
編集註
編集- ↑ 青空文庫、2014年2月14日作成(底本:「定本小川未明童話全集 5」講談社、1977(昭和52)年3月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/52929_53041.html
- ↑ 青空文庫、2008年8月9日作成、2011年10月9日修正(底本:「久生十蘭全集 Ⅶ」三一書房、1978(昭和53)年1月31日第1版刷第3刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001224/files/46148_32249.html
- ↑ 青空文庫、1999年4月8日公開、2004年2月23日修正(底本:角川文庫「人間失格・桜桃」角川書店、1989(平成元)年4月10日初版発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/308_14910.html
- ↑ 青空文庫、2000年9月18日公開、2005年10月30日修正(底本:「太宰治全集6」ちくま文庫、筑摩書房、1966(昭和41)年11月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1095_20125.html
- ↑ 青空文庫、2007年2月23日作成(底本:「豊島与志雄著作集 第五巻(小説Ⅴ・戯曲)」未来社、1966(昭和41)年11月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/42679_26264.html
- ↑ 青空文庫、2021年9月27日作成(底本:「中谷宇吉郎随筆選集第三巻」朝日新聞社、1966(昭和41)年10月30日第2刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/59782_74222.html
- ↑ 青空文庫、2006年4月26日作成(底本:「豊島与志雄著作集 第六巻(随筆・評論・他)」未来社、1967(昭和42)年11月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000906/files/42548_22826.html
- ↑ 青空文庫、2018年8月28日作成(底本:「中谷宇吉郎集 第七巻」岩波書店、2001(平成13)年4月5日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/57263_65746.html
- ↑ 青空文庫、2018年1月2日作成(底本:「花と龍(上)」岩波現代文庫、岩波書店、2006(平成18)年2月6日第1刷発行。「花と龍(下)」岩波現代文庫、岩波書店、2006(平成18)年3月16日第1刷発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/001488/files/56224_63556.html
- ↑ 青空文庫、2005年10月8日作成(底本:「於母影 冬の王 森鴎外全集12」ちくま文庫、筑摩書房、1996(平成8)年3月21日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001196/files/45276_19777.html
- ↑ 青空文庫、2022年7月27日作成(底本:「山本周五郎探偵小説全集 第四巻 海洋冒険譚」作品社、2008(平成20)年1月15日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001869/files/59565_76074.html
- ↑ 青空文庫、2007年5月1日作成(底本:「垢石釣り随筆」つり人ノベルズ、つり人社、1992(平成4)年9月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001248/files/46776_26790.html
- ↑ 青空文庫、2007年5月1日作成(底本:「吉川英治全集・16 新編忠臣蔵 彩情記」講談社、1968(昭和43)年12月20日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001562/files/58019_65472.html
- ↑ 青空文庫、2016年2月1日作成(底本:「狂い凧」講談社文芸文庫、講談社、2013(平成25)年10月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001798/files/56775_58206.html
- ↑ 青空文庫(1997年9月5日公開、2013年8月16日修正、CC BY 2.1 JP公開、底本:「エキスパンドブック版 パソコン創世記」ボイジャー、1995年2月)https://www.aozora.gr.jp/cards/000055/files/365_51267.html
- ↑ 桂 ゆかり, 熱電研究のための第一原理計算入門, 日本熱電学会誌, 2014-2015, 11 巻, 1 号, p. 18-25, 公開日 2022/02/14, Online ISSN 2436-5068, Print ISSN 1349-4279, https://doi.org/10.50972/thermoelectrics.11.1_18, https://www.jstage.jst.go.jp/article/thermoelectrics/11/1/11_18/_article/-char/ja CC BY 4.0で公開