ほおばる【頬張る・頰張る】
- 食べ物を口の中いっぱいに入れる。
- 彼女は母親の傍に腰掛けて仏蘭西の麺麭なぞを頬張りながら喰っていた。(島崎藤村「新生」)〔1918年〕[1]
- 漁夫たちは口を食物で頬張らせながら、きのうの漁のありさまや、きょうの予想やらをいかにも地味な口調で語り合っている。(有島武郎「生まれいずる悩み」)〔1918年〕[2]
- 食べ物を口の中いっぱいに入れながら食べる。
- そして悪魔は、紳士がビールのコップを手にとって、ぐーっと飲んでる隙に、皿の中の料理をぺろりと頬張ってしまいました。それに味をしめて、次の皿のもその次の皿のも、大きい口でぺろりと頬張ってしまいました。(豊島与志雄「不思議な帽子」)〔1925年〕[3]
- 渠はそのへんを泳いでいた魚類を五、六尾手掴みにしてむしゃむしゃ頬張り、さて、腰に提げた瓢の酒を喇叭飲みにした。(中島敦「悟浄出世」)〔1942年〕[4]
- 物をいっぱいに詰める。
- その片隅の八日巻の時計の下の折釘に、墨西哥かケンタッキーの山奥あたりにしかないようなスバらしく長い、物凄い銀色の拳銃が二挺、十数発の実弾を頬張ったまま並んで引っかかっているのだ。(夢野久作「難船小僧」)〔1934年〕[5]
- 第一家がまだ卅五圓ぐらゐな借家ずまゐで、狹い部屋は、屏風を頬張つてゐるやうなかつかうになり、掃除をする者も出入りにもとかく邪魔あつかひにばかりされる。(吉川英治「折々の記」)〔1953年〕[6]
活用と結合例
各活用形の基礎的な結合例
意味 | 語形 | 結合 |
否定 | ほおばらない | 未然形 + ない |
意志・勧誘 | ほおばろう | 未然形音便 + う |
丁寧 | ほおばります | 連用形 + ます |
過去・完了・状態 | ほおばった | 連用形音便 + た |
言い切り | ほおばる | 終止形のみ |
名詞化 | ほおばること | 連体形 + こと |
仮定条件 | ほおばれば | 仮定形 + ば |
命令 | ほおばれ | 命令形のみ |