日本語 編集

動詞 編集

じる (さんじる)

  1. (自動詞)行く」の謙譲語参るうかがう
    • 1936年、上村松園「芸術三昧即信仰」[1]
      しとしとと春雨の降る日、つとにおきて僧堂に禅師を訪ねました。有り余るなやみを胸に抱いて禅師の教えを乞いに参じたところ、詰所の人が禅師はお休みだからと断るようでした。
    • 1965年、梅崎春生「幻化」[2]
      膳を置き、老婦人はていねいに頭を下げた。「お疲れでございましたろ。只今主人も参じます」
  2. (自動詞) 参加する。
    • 1923年、国枝史郎「沙漠の古都」[3]
      私は実際その時まではただ可哀そうな名門の児――意気地のない貴公子に過ぎなかったがこの時慨然と震い立った。私は剣をとったのだ。革命党に参じたのだ。孫逸仙の旗下に従いたのである。
    • 1947年、坂口安吾「家康」[4]
      そして、自分に致命傷の危険がなければ人が何をしようと、どんなに威張ろうと、朝鮮へ遠征しようと、親類の小田原を亡ぼそうと、我関せずでいる人だ。時世時節なら何事も仕方がないという考えで、秀吉の幕下に参じて関白太閤などと拝賀することぐらい蠅が頭にとまったほどにしか考えていない。
  3. (補助動詞) (連用形+助詞「」に付く形で)「してあげる」の謙譲語。差し上げる
    • 1906年、夏目漱石「二百十日」[5]
      「何に致します」「半熟にするんだ」「煮て参じますか」「まあ煮るんだが、半分煮るんだ。半熟を知らないか」
    • 1954年、宮本百合子「農村」[6]
      御隠居様あ、御存じなんべえから、分ったらちょっくら教えてあげて参じ様と思いましてない。

活用 編集

さん-じる 動詞活用表日本語の活用
ザ行上一段活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
さん じる じる じれ じよ
じろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 さんじない 未然形 + ない
意志・勧誘 さんじよう 未然形 + よう
丁寧 さんじます 連用形 + ます
過去・完了・状態 さんじた 連用形 +
言い切り さんじる 終止形のみ
名詞化 さんじること 連体形 + こと
仮定条件 さんじれば 仮定形 +
命令 さんじよ
さんじろ
命令形のみ

関連語 編集

派生語 編集

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  1. 青空文庫、2009年5月5日作成(底本:「青帛の仙女」同朋舎出版、1996(平成8)年4月5日第1版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000355/files/49735_35113.html
  2. 青空文庫、2016年1月1日作成(底本:「桜島・日の果て・幻化」講談社文芸文庫、講談社、1989(平成元)年6月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001798/files/56634_58211.html
  3. 青空文庫、2005年12月2日作成(底本:「沙漠の古都」国枝史郎伝奇文庫26、講談社、1976(昭和51)年7月12日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000255/files/45269_20645.html
  4. 青空文庫、2006年12月30日作成(底本:「坂口安吾全集 04」筑摩書房、1998(平成10)年5月22日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42911_25520.html
  5. 青空文庫、1999年2月19日公開、2004年2月27日修正(底本:「夏目漱石全集3」ちくま文庫、筑摩書房、1987(昭和62)年12月1日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/751_14958.html
  6. 青空文庫、2008年8月8日作成(底本:「宮本百合子全集 第二十九巻」新日本出版社、1986(昭和61)年3月20日第5刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000311/files/7910_32365.html