日本語 編集

動詞 編集

する (はいする)

  1. (他動詞, 文章語)邪魔なものや不要なものを〕除く排除する。
    • 1934年、小川未明「童話を書く時の心」[1]
      愛のなきところには、芸術もなければ、教育もないのであります。強制、強圧を排して、自治、自得に重きを置くはこのためです。
    • 1940年、三木清「哲学入門」[2]
      科学が価値判断を排するのは主観的なものの混入を防ぐためであるが、哲学もまた、価値を問題にするにしても、単に主観的であることは許されない。
    • 1958年、中谷宇吉郎「母性愛の蟹」[3]
      小林・池島両先生とも、このこうばく蟹には、大のご執心である。「こうばく蟹がきたから」と電話をかけると、どんなに御座敷の忙しい時でも、万難を排して、ご自身で私の家までやって来てくれる。
  2. (他動詞, 文章語)などを〕押し開く。押して除ける
    • 1939年、蘭郁二郎「白金神経の少女」[4]
      その次の瞬間に、私は、なお一層驚いてしまったのである。それは、今押した呼鈴の響きに応じて、奥のドアーを排して現われた少女の、その余りの美しさから来る驚きであった。
    • 1937年、火野葦平「糞尿譚」[5]
      このおでん屋は天野の行きつけということを知って居たし、ここに来れば何か秘密を解く鍵にぶっつかるかも知れないと思って、時間を見はからって寄ったのだが、彼が縄暖簾を排して入ると、片隅で大声を立てて笑いながら高話をしていたのが、ぴたりと鳴りやんだ。
    • 1947年、太宰治「朝」[6]
      「こりゃ、いけねえ。」と私はひとりごとのように呟き、やっと窓のカアテンに触って、それを排して窓を少しあけ、流水の音をたてた。

活用 編集

排-する 動詞活用表日本語の活用
サ行変格活用
語幹 未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形


する する すれ せよ
しろ
各活用形の基礎的な結合例
意味 語形 結合
否定 排しない 未然形 + ない
否定 排せず 未然形 +
自発・受身
可能・尊敬
排される 未然形 + れる
丁寧 排します 連用形 + ます
過去・完了・状態 排した 連用形 +
言い切り 排する 終止形のみ
名詞化 排すること 連体形 + こと
仮定条件 排すれば 仮定形 +
命令 排せよ
排しろ
命令形のみ

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  1. 青空文庫(2011年11月30日作成。底本:「芸術は生動す」国文社、1982(昭和57)年3月30日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001475/files/51811_46591.html
  2. 青空文庫(2007年4月12日作成、2012年7月19日修正。底本:「三木清全集 第七巻」岩波書店、1967(昭和42)年4月17日発行)https://www.aozora.gr.jp/cards/000218/files/43023_26592.html
  3. 青空文庫(2016年3月4日作成。底本:「中谷宇吉郎集 第八巻」岩波書店、2001(平成13)年5月7日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001569/files/57276_58833.html
  4. 青空文庫(2006年12月30日作成。底本:「火星の魔術師」国書刊行会、1993(平成5)年7月20日初版第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000325/files/2190_25517.html
  5. 青空文庫(2014年6月12日作成。底本:「糞尿譚・河童曼陀羅(抄)」講談社文芸文庫、講談社、2007(平成19)年6月10日第1刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/001488/files/51168_53838.html
  6. 青空文庫(2004年2月19日作成。底本:「グッド・バイ」新潮文庫、新潮社、1999(平成11)年6月10日56刷)https://www.aozora.gr.jp/cards/000035/files/1562_14860.html