なし
日本語
編集名詞:梨
編集名詞:無
編集- ありに対立する概念。存在、可能性などの否定。ないこと。あたかも用言のように連用修飾する文節を受けることがある。
- おれにはふたつもいぼがあるぞ。杉(=弟の杉作)にゃひとつもなしだ。(新美南吉『いぼ』)
- しないこと。選択肢に含めないこと。許容しないこと。
- 引き分けの場合、延長戦はなし。
- プライベートに関する質問はなしということで。
- 取り消し。なかったこと。
- 今の話はなしにしよう。
- 「なしに」の形で、ないの連用形中止形に相当する語句を作る。なく。ないままで。
- 内的な進歩なしに、心境の進展なしに、ただ表現の技巧にのみの進歩があり得る。(豊島与志雄『野に声なし』)
- これは理窟でなしに、僕にたださう想へるのだよ。(原民喜『比喩』)
- 「でなし」「でもなし」などの形で、終助詞的に強調などを表す。わけではないのだ。
- だがそんなことは、まあいいや、明日という日がないじゃなし! と空嘯いてみたものの、さてこれから、どうしよう……ということより寧ろ、何処へ行こうということが、ぴたりと気持を遮ってしまった。(豊島与志雄『神棚』)
- 「でなし」「でもなし」などの形で、接続助詞的に付帯状況や理由などを表す。でなく。でないまま。でないので。
- 家の者はみな遊びに出かけたので、留守居に残された私は部屋に坐つたまま、背を壁にもたせて、何を考へるでもなし、ひとりつくねんとしてゐました。(薄田泣菫『茶立虫』)
- まずい魚介、まずい肉、まずい蔬菜といった材料ではなにができるものでなし、心に楽しむ料理など、もとよりでき得るものではない。(北大路魯山人『欧米料理と日本』)
- 学問があったって、お金がもうかるわけじゃなし、あの野郎なんざ、二十年から屋台のオデン車をひっぱって歩きやがって、いくらのカセギもないくせに大酒はのみやがる、酔っ払って、のたくり廻りやがる。(坂口安吾『出家物語』)