便宜 (べんぎ)(古くは:びんぎ)
- 都合の好いこと。利点。
- 傍観者と云うものは岡目八目とも云い、当局者は迷うと云う諺さえあるくらいだから、冷静に構える便宜があって観察する事物がよく分る地位には違ありませんが、その分り方は要するに自分の事が自分に分るのとは大いに趣を異にしている。(夏目漱石『中味と形式――明治四十四年八月堺において述――』)
- 特別な厚遇。利益。
- ラヂオ文学といふ新しい様式について、私は常に興味をもち、なにか原理的なものを発見しようと心掛けてゐるのだが、放送局との関係も、別にそのために特殊な便宜を与へられてゐるわけではないから、なかなか思ふやうに研究もできないでゐる。(岸田國士『ラヂオ・ドラマ選者の言葉』)
- 初めの二三枚は和文のタイプライターで打った宣言演説の原稿であり、そのあとにこの地方の知事とか警務部長とか国鉄の当局とか町長とかに当てた通牒が続いていた。(略)それは大会場へ赴くためにあらゆる便宜を供与してもらいたいという意味のものである。(和辻哲郎『夢』)
- 状況に合ったかりそめの手段。便法。
- 現在の日本の生活難が原因になって、一部には英語とキリスト教を処世上の一便宜として考える人々があらわれている。(宮本百合子『今日の日本の文化問題』)
- 認識という言葉が日常的に使われた揚句、いつの間にか或る特別な内容の認識のことを意味するようになり、かくて却って、世間にはそのままでは通用しないような宗派的用語とさえなっていることを、吾々は注意しなければならぬ。(略)哲学者も亦、この言葉を必要以上の狭い約束の下に、ただの用語上の便宜として、用いていないとは云われない。(戸坂潤『認識論とは何か』)
便宜 (べんぎ)
- 都合が好い。
- 代助は帯の間から時計を出して見た。父の所へ来ている客は中々帰りそうにもなかった。空は又曇って来た。代助は一旦引き上げて又改ためて、父と話を付けに出直す方が便宜だと考えた。(夏目漱石『それから』)
活用と結合例
各活用形の基礎的な結合例
意味 |
語形 |
結合
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推量・意志 |
便宜だろう |
未然形 + う
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過去・完了 |
便宜だった |
連用形 + た
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否定形 |
便宜でない |
連用形 + ない
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自動詞化 |
便宜になる |
連用形 + なる
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言い切り |
便宜だ |
終止形のみ
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名詞化 |
便宜なこと |
連体形 + こと
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仮定条件 |
便宜ならば |
仮定形 + ば
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様態 |
便宜そうだ |
語幹 + そうだ
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- ピンイン: piányi 注音: ㄆㄧㄢˊ ㄧˊ
- 「便」の発音は、一般に「biàn」で本例は重要な例外。
- 広東語: pin4yi4
- 閩南語: pân-gî
- 客家語: phièn-ngì
- 呉語: bie1nyi
便 宜
- 値段が安い。
便 宜(ハングル: 편의)
- (日本語に同じ)便宜。