ああ
- あのように。
- 必ずしも自意識の強い女はああ云う風に終るもので、お糸のように順良な女は、ああ云う結果になると定ったものではない。(夏目漱石 『予の描かんと欲する作品』)
- 私は黙り込んでいた。表も私を前に置いてああまでしなければよかったというような顔をして、気まずく黙っていた。(室生犀星 『性に眼覚める頃』)
- 少し変だとは思わないかい。/少し変なのは、昌さんの方ですわ。/あれは、昔からああだ。/いいえ、以前はそうでもなかったわ。(森本薫 『華々しき一族』)
- この一と月ほど、ああだこうだと押しあっていたんですけど、やっとのことで話がついたところ(久生十蘭 『虹の橋』)
ああ【嗚呼、噫、嗟乎、于】
- 物事に感じて、歓喜または悲観の情を表す声。あ。あな。あら。
- 問いかけに答える声。
- お蔦「貴方)……貴方。」早瀬「ああ。」(と驚いたように返事する。)お蔦「いい、月だわね。」(泉鏡花『婦系図』)
- あいづち。話を聞いて了解したことを表す。
- 「部屋の窓はどうでしたか」/「部屋の窓も全部閉っていました」/「ああ、そうですか。(略)」(海野十三『密林荘事件』)
- 気づきや理解、思い出し、発見などのニュアンスを表す。
- 肯定の返事。
- 「まだ、おッかさん戻らないの?」/「ああまだだよ。」/「自転車に乗っていったんでしょう?」/「ああ自転車に乗って行ったよ。提灯つけて行ったよ。」(林芙美子『蛙』)
- 同意を表す。
- 「済まないが、税金が五倍になった、今日は少うし鍛冶場へ行って、炭火を吹いてくれないか」/「ああ、吹いてやろう。本気でやったら、ぼく、もう、息で、石もなげとばせるよ」(宮沢賢治『オツベルと象』)
- 呼びかける声。
- 船の副長があわたゞしく三等客の中を推し分けて來て、今しがた金を盜まれたと言つて訴へた一人の百姓の傍に立つた。/『ああ旦那、金はもう見つかりましただあよ。』と彼は言つた。(石川啄木『我が最近の興味』)
- 乱暴に咎め立てするニュアンス。
- 廻れ右いッ これは尻尾か ああ?/その兵! 阿弥陀に被っとる ああ?(波立一『動員令』)
- 発言内容を考えている際の発語。
- ああア皆さん。このクラスは相変らず元気者ぞろいじゃのう。夏休み中は、さぞやさぞ楽しいことであったろう。先生などは夏休み中、すこし気にかかることがあって(といってはっと気がつき)ああむにゃむにゃ、えっへん。――ああア、そこで新学期の始めに一つ、クラス全体に苦言を呈しておく。(海野十三『新学期行進曲』)