日本語

編集

代名詞

編集

それ【其、れ】

  1. 会話において、話し手よりも聞き手の方により近いと思われる物事を指す。
    • それは私のコップです。 (この場合、コップは自分よりも呼びかけている相手の近くにあることになる)
  2. すでに話題として取り上げられた事柄。
    • それそれでいいよ。
    • それとこれとは話が別だ。
    • それはないよ。
  3. 相手から示されたり、やや離れたところに見つかったりした、まさに思い描いていたもの。相手が示した、ぴったり当てはまるもの。
    • ある時西洋人が文楽の舞台で狐を見て非常に感心し、それを見せてもらいに楽屋へ来た。人形使いはあそこに掛かっていますと言って柱にぶら下げた狐をさした。それは胴体が中のうつろな袋なので、柱にかかっている所を見れば子供の玩具にしか見えない。西洋人はどうしても承知しなかった。(中略)そこで人形使いはやむなく立って柱から狐を取りそれを使って見せた。西洋人は驚喜して、それそれだと叫び出したというのである。 (和辻哲郎、『文楽座の人形芝居』、1935)
  4. (「それで」「それでいて」「それでも」などの形で)見かけと違って。そう見えて。
    • 昨夜彼らが新宅から帰って家へ這入る途端門口に待ち設けていた差配人は、亭主が戸をしめる余地のないほど早く彼らに続いて飛び込んで、なぜ断りなしにしかも深夜に引越をするそれでも君は紳士かと云うと、我輩が我輩の荷物をわきへ運ぶに誰に断わる必要がある。また何時に荷を出そうとこっちの勝手じゃないかと亭主が抗弁する。(夏目漱石、『倫敦消息』、1901)
  5. 一度出した名詞をすぐ後に繰り返して用いるときに使う。翻訳調のやや硬い言い方で、通常は単に省略する。
    • 東京23区の人口は、大阪市のそれに比べて3倍以上だ。
  6. (古用)そこ
    • それへなおれ。

派生語

編集

関連語

編集

翻訳

編集

感動詞

編集

それ

  1. 思い切りや、勢いをつけるときに発する言葉。
    • それとばかりに昨年の秋からこらへてゐたその芽生の力をいつせいに解きほぐすのである。(若山牧水 『樹木とその葉 自然の息自然の聲』

関連語

編集